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オシム「サッカーの未来が分かる試合」
クロアチアvs.イングランドの重要性。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/07/09 11:50
オシムをして「チームの結束が固すぎるほど、まとまっている」と言わしめたクロアチア代表。政治的背景抜きに、この代表チームは語れない。
「日本はもう1試合やるべきだった」
――今日の試合もまさにそうでした。
「選手たちは消耗し尽して、疲労が試合の運命を決めた。フィジカルコンディションが良ければ試合もずっといいものになっていたが、疲労が試合のレベルも下げてしまった。優れた選手でもコンディションが万全でなければ思うようなプレーはできない。
モドリッチにしろ香川にしろ、頭に酸素を送り続ける必要がある。酸素の補給は不可欠で、へとへとになって家に帰るようではまずい」
――コンディショニングがとても重要になります。
「それでも幾人かの選手は才能を示した。モドリッチやコバチッチ、クラマリッチといった選手たちで、彼らには未来がある。それは日本の選手たちも同じだ。
日本はもう1試合やるべきだった。他がどんなやり方をするかを観察して、必要なだけ相手に喰らいつく。そうなって欲しいと私は願う。
君らを心から祝福する。
日本に幸運が訪れんことを」
ラキティッチとモドリッチへの過大なプレッシャー。
――クロアチアについてもう少し語ってください。準決勝進出は'98年以来ですが。
「彼らは最後相当疲れていた。とりわけラキティッチとモドリッチのふたりには、これまでもずっと大きなプレッシャーがかかっていたし、この試合でも力尽きるまでプレーした。そして最後はPKも蹴らねばならなかった。
彼らがどれだけ疲弊し尽していたか私にはよくわかった。
しかし彼らの努力は報われた。(試合内容を鑑みれば)勝利に値したし、PK戦は公平とは言えないが、それで勝敗を決めねばならないのがサッカーでもある。PK戦は観客にとって最も面白い勝負のつけ方として考案された。ある意味これ以上はない真剣勝負でもある。
多くの人々はPKを簡単に蹴れると考えている。しかし背負うものが大きくなると、PKを蹴るのは大きな重圧が伴う。成功するか失敗するかで、動く金の額も莫大なものになる。そうしたことすべてが選手の頭をよぎる。だからこそ難しい」