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F1最大勢力に舞い戻ったフランス人。
10年ぶり母国GPにアレジも感動。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2018/06/29 07:00
3人のフランス人ドライバー。左からグロージャン(ハース)、オコン(フォース・インディア)、ガスリー(トロロッソ)。
ヘルメットをトリコロールカラーに。
「Make F1 French Again」
最後のフランスGPから10年ぶり、ポール・リカールでのF1としては1990年以来、じつに28年ぶりとなった今回のフランスGP期間中、サーキットはこの単語が刺繍された帽子をかぶった人々で賑わっていた。フランス人にとって、今年のフランスGPは“21分の1”のレースではなく、フランスのモータースポーツ史に残る特別な週末だったのだ。
一時は皆無だったフランス人ドライバーもグロージャンに続いて昨年からエステバン・オコンがフル参戦。さらに今年からピエール・ガスリーもフル参戦と、3人がレギュラードライバーとして名を連ねるようになった。フランスの勢いは、いまやドイツ、フィンランド、スペインを押さえて国籍別で最多のドライバーを輩出するまで回復していた。
こうして迎えた記念すべき復活の週末。3人のドライバーはそれぞれの思いを胸に戦いに挑んだ。
グロージャンはヘルメットのデザインを一新。ヘルメット全体をフランスの国旗と同じトリコロール・カラーにした。
ガスリーはいつものヘルメットに多くの往年のフランス人ドライバーの名前を刻印した特別仕様にしていた。
オコンは平常心でレースをしようと、特別なことは何もしなかったが、サーキットを訪れると興奮が抑えきれなかったという。
「2013年にポール・リカールで開催されたフォーミュラ・ルノー2.0で勝ったんだ。それが僕のシングルシーターでの初勝利。だから、ここに戻って来たとき、特別な気分になった」(オコン)
'08年以来の「ラ・マルセイエーズ」。
6月24日、ポール・リカールのスターティンググリッド上で、フランス共和国国歌「ラ・マルセイエーズ」が流れた。F1でフランス国歌が流れるのは、2008年に富士スピードウェイで開催された日本GPで、フェルナンド・アロンソが所属するルノーが優勝したとき以来のこと。
演奏が終了し、フランス空軍機がサーキット上空を通過すると、満員のスタンドは総立ちで大歓声を送った。
だが、それから十数分後、歓声は悲鳴へと変わった。