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シャラポワの自伝が全方位に挑発的!
「妖精」とは程遠いエゴと攻撃性。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2018/06/29 10:45

シャラポワの自伝が全方位に挑発的!「妖精」とは程遠いエゴと攻撃性。<Number Web> photograph by AFLO

コート内外で発揮されるシャラポワの闘争性は、過酷な環境から成り上がることを可能にした素養の1つでもあるのだろう。

スポンサーを取られた選手たちの嫉妬心。

 2004年のウィンブルドンで優勝した後、シャラポワは「広告の女王」という顔を持つようになる。しかし、それが他の選手たちとの溝を深くする要因になってしまう。

「マリアがパイを取れば、ほかの人はもらえないことになる。ある種の人たちはそういうことが理由で、心からわたしに反感を抱く。面と向かっては表に出さないだろうけれど、ツアーで新たにわたしが対処しなければならなくなったのは、嫉妬心だった。ほかのプレーヤーがわたしを快く思わないのは、コート上で負かされるからでも、自分よりも優れた選手だからでもない。いまいましい宣伝の仕事をわたしにすべて奪われたからだ」

 その他、セリーナ・ウィリアムズとの関係性や、ふたつの恋愛、2016年に発覚したドーピング問題についても率直に語られており(この件に関しては、未だにシャラポワは統括団体の対応に怒っている)、シャラポワの波乱万丈のストーリーはグングン前へと進んでいく。

 自伝は完結を見ているが、さて、彼女のテニスプレーヤーとしての「終わり」はどのようにして訪れるのだろう。

 最高の形でフィナーレを迎えたいという欲求が本からも伝わってくる。それは極めてむずかしいタスクになるだろうが、今年のウィンブルドン、シャラポワの試合を注視したいと思う。

貧しい少女時代、ステージパパ、遅い初恋、世界ランキング1位――。
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マリア・シャラポワ

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