セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
奇跡のセリエA復帰を祝ったが……。
パルマに待っていたSNSの落とし穴。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/06/27 10:30
伝統ある「パルマFC」は財政難を理由に売却され、'15年6月に消滅。その後、「SSDパルマ・カルチョ1913」としてセリエD(4部)から再出発した。
経営権を獲得した中国資本は冷静な補強方針。
3年前の破綻後、クラブ再生にあたり大きな役割を果たした地元実業家たちによる役員会は、昨年11月に中国資本の「Desports」社にクラブ株式60%と経営権を譲渡。グラナダ(スペイン2部)と重慶斯威(中国1部)も傘下に納める蒋立章会長は、36歳の若さながら冷静なビジネスマンの顔で言う。
「新しいシーズンの最重要目標は、何が何でもセリエAに残留することです。そのためには補強が必要ですが、支出の目的はつねに理に適っていなければなりません」
今夏補強の資金は放映権料やスポンサー収入などで得られる4500万ユーロ程度だが、新経営陣は選手やコーチの活発な交換や技術交流などを狙いとした“伊・西・中3国クラブ連合構想”を画策していると見られる。
地に足のついた野望をもって臨む4年ぶりの檜舞台。復活のパルマへの期待は膨らむ。
相手DFに「頼むぜ、空気読めよ」。
ところが、高揚するパルマへ思わぬところから“待った”がかかった。
今月上旬、FIGC(イタリア・サッカー連盟)の競技裁定委員会が、パルマに競技規則違反の疑いあり、と調査を始めたことが発覚した。早い話が八百長疑惑だ。
昇格がかかっていた昨季セリエB最終節の4日前、パルマのベテランFWカライオが、対戦相手スペツィアに在籍する旧知のDF2人に、通信アプリで“忖度”を迫るメッセージを送っていた。
「おい、俺たちの仲だろ。頼むぜ、空気読めよ」
このメッセージが“方法や手段、または完遂、未完遂を問わず、ある試合や大会における結果の歪曲を助長する行為を禁ずる”競技規則第7条に抵触しているのでは、と危惧した選手とスペツィアのクラブ幹部が連盟へ内容を報告し、すぐに取り調べが始まった。
カライオを初めとする関係者全員はすでに事情聴取を受けている。彼は「手加減しろよ」という一連のメッセージの後に時間を置いて「冗談だった」と絵文字入りで送信しているが、ポスト・カルチョスキャンダル時代を生きるプロサッカー選手として軽率だったという誹りは免れないだろう。
むしろ問題は、彼の雇用元であるパルマに無過失責任が生じるかどうかが大きな争点になっている。
仮にパルマへ2点以上の勝点剥奪処分が下れば、昨季のセリエBレギュラーシーズンの順位が変わる。その連鎖作用からプレーオフ決勝戦でフロジノーネに敗れたパレルモに代替昇格の可能性すら出てくるのだ。