セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
奇跡のセリエA復帰を祝ったが……。
パルマに待っていたSNSの落とし穴。
posted2018/06/27 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
今のイタリア半島は、W杯に乗じた商戦キャンペーンや大安売りがほとんどないせいで不気味なくらい静かだ。
ただ、パルマだけは様相が異なっている。クラブと町が熱く沸騰したかと思えば冷や水をぶっかけられ、慌ただしく落ち着かない。
それもそのはず、彼らのセリエA復帰が“お預け”状態になっているからだ。
経営陣の巨額詐欺事件による破産とクラブ消滅から3年。一度この世から消滅したパルマ奇跡の復活劇は、降って湧いたようなルール違反の発覚と昇格取り消しの可能性という意外な局面を迎えている。
「必ずセリエAへ帰る。クラブとファンに俺はそう約束した」
3年前の夏、主将ルカレッリは悔し涙とともに誓った。約束は果たされ、パルマはセリエAへ帰ることができるのか。
「試合残り10分を切ったくらいか。スペツィアの応援団が『貴様らもセリエBに残りやがれ!』と呪詛のように野次ってきた。そのときは正直“ああ、ダメだったか”と思った」(ルカレッリ)
セリエB最終節、昇格は他力だった。
昨季のセリエB最終42節ではドラマが起きた。
優勝はすでにエンポリが手中に収め、残る1つのセリエA直接昇格枠争いは勝点71の2位フロジノーネと同69の3位パルマに絞られていた。彼らはそれぞれホームで9位フォッジャと、アウェーで10位スペツィアとの最終戦を迎えた。
直接昇格できる2位と、負担が大きい上に何も残らない可能性も高いプレーオフを強いられる3位とでは雲泥の差がある。勝点2差をつけられていたパルマの細い拠り所は、最終勝点で並びさえすればリーグ戦での直接対決の得失点差で上回れることだった。
パルマは2-0でスペツィアを下した。
試合の途中、フロジノーネの動きはベンチやゴール裏の反応によって明らかだった。先制された彼らは後半に盛り返し、73分に逆転に成功していた。ルカレッリは守備ラインを統率し、クロスボールをクリアしながらフロジノーネの戦況を逐一理解していた。
「この状況でホームチームが追いつかれることはまずない。だから俺は逆転2位を諦めて、試合終了までチームメイトたちの集中力をどう保たせるか、それだけを考えていた。いい精神状態でリーグ戦を終える。それがプレーオフに繋がる、とね」