サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
香川が呼んだ必然のPK+一発退場。
コロンビアを脅かした「強い選択」。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/06/20 11:45
殊勲の大迫と香川が交代後にピッチサイドで聞いたタイムアップの笛の音は、いかほどに甘美なものだったろうか。
数的優位で求められたバランス感覚。
4-2-3-1のシステムで香川をトップ下に置き、2列目左サイドに乾貴士を配したのも、パラグアイ戦のパフォーマンスを評価してのことである。実質的に3週間強でこの日を迎えたなかで、西野監督はパラグアイ戦からの流れを重視したのだった。槙野智章ではなく昌子をセンターバックに指名したのも、状態のいい選手を使ったと理解できる。
「ベテラン重視」との批判も浴びてきたが、コロンビア戦のスタメンは経験や実績に基づいたものではない。指揮官の勝利に対する緻密な計算が表れたものだった、と言っていい。
開始早々にして先制点をつかみ、数的優位にも立った。だからといって、その後の試合運びまで楽になるわけではない。追加点を狙いつつ、同点弾を与えないバランス感覚が求められる。
先制からハーフタイムを迎えるまでは、その意味で物足りないものだった。決定機を生かし切れないだけでなく、オープンプレーとセットプレーからファルカオをゴール前でフリーにしてしまう。それだけでなく、39分には直接FKを決められたからだ。
キンテーロに喫した同点弾を巻き戻すと、長友佑都のクリアミスとそれをカバーした長谷部の反則が浮かび上がる。キャプテンの対応は必ずしも責められないが、自陣でのもったいない反則は西野監督の就任以前から見られる悪癖のひとつだ。不要なリスタートを与えない共通理解を、いまいちど深めておく必要がある。
ハメス・ロドリゲスにはキレがなく。
後半開始からの15分で、日本は4つの際どいシーンを作り出している。60分頃までに2-1へ持ち込みたいところだったが、スコアを動かすことはできない。ただ、59分に登場してきたハメス・ロドリゲスにいつものキレがなく、10人のコロンビアが時間の経過とともに足を止めていくことで、失点の気配は漂わなくなっていた。
あとは、2点目を決め切れるか。
ここで真価を発揮したのが大迫だ。
73分だった。途中出場の本田圭佑の左CKを、アリアスと競り合いながらヘディングで合わせる。オスピナが見送ったボールは右ポストを叩いてゴールへ吸い込まれていった。
先制のPKにつながったシーンに限らず、大迫は相手センターバックとの攻防ではっきりとアドバンテージを握っていた。足りなかったのはゴールだけで、ここではチャンスをしっかりと得点に結びつけた。
大迫は守備でも価値ある働きをした。77分、至近距離からハメスが浴びせてきたシュートを、スライディングでブロックしたのだ。後半の日本が与えた唯一のピンチであり、この試合の日本が最後に許した決定機だった。