ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「2018年の桜庭和志」が目指すもの。
地味な寝技で楽しませる斬新な大会。
posted2018/06/05 11:30
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
NIKKAN SPORTS
『Number』953号から、ノンフィクション作家・柳澤健氏の新連載「2000年の桜庭和志」がスタートした。
桜庭にとって2000年と言えば、グレイシー一族の雄、ホイス・グレイシーを90分に及ぶ死闘の末くだした、伝説的な一戦(2000年5月1日、東京ドーム)があった年だ。
物語は、その試合をひとつの起点として、桜庭和志自身のこれまでの歩みはもちろん、“敵役”であるグレイシー一族および柔術の歴史、そしてプロレスと格闘技の歴史が絡み合う、大河ドラマとなるのだろう。
桜庭和志vs.ホイス・グレイシーは、それらすべての歴史がそこに収束されるような、文字どおり歴史的な一戦だったからだ。
「プロレスラーは本当は強いんです」
'93年にUFCとグレイシー柔術が世に出て以降、ファンが心に抱いていた“プロレス最強幻想”は崩壊。そんな危機的状況下において桜庭は、'97年12月21日に横浜アリーナで行われた「UFC JAPAN」に、試合4日前のオファーを受けて緊急出場すると、自分より25kgも体重の重いカーウソン・グレイシー柔術黒帯の強豪マーカス・コナン・シウヴェイラから、腕ひしぎ十字固めで見事に一本勝ちを奪ってみせた。
そして試合後、オクタゴン内のインタビューで桜庭は、はにかみながら「プロレスラーは本当は強いんです」と発言すると、館内は大歓声に包まれ、プロレスファンは大いに溜飲を下げたのだ。
この一戦を皮切りに桜庭は、UFC12ヘビー級トーナメント優勝者のヴィトー・ベウフォート、パンクラスのエース船木誠勝を圧倒したエベンゼール・フォンテス・ブラガ、さらにはホイラー、ホイス、ヘンゾ、ハイアンといったグレイシー一族を次々と破り、“プロレス界の救世主”と呼ばれるようになったのである。