プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
高橋ヒロム、スーパーJr.の枠を越えて。
「オレが新日の新しい象徴になる!」
posted2018/06/06 16:30
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
高橋ヒロムはリングにあおむけに寝そべって駄々っ子のように足をばたつかせて、優勝の喜びに浸っていた。
今どき、そんな駄々っ子なんて外で見かけなくなったが、ヒロムを見ていると「やだ、やだ」を体で必死に主張していた幼子を思い出してしまう。
ヒロムは6月4日、後楽園ホールで行われた新日本プロレスの「BEST OF THE SUPER Jr.」の優勝決定戦で石森太二を下して優勝した。34分に渡った戦いの最後はヒロムが「Time Bomb」でとどめを刺した。
そして、寝ころんだまま「やった、やった」と叫んで歓喜した。
「うれしい。うれしかった。オレは不器用だよ。何をやっても、不器用だ。そんなことは、わかっている。でも、そんなヤツでも心の底からプロレスを楽しめるんだよ。リングの上で、あり得ない力を発揮するんだよ」
オスプレイとどちらが世界最強Jr.か……。
ヒロムは1989年生まれの28歳。プロレスラーとしてのキャリアは約8年。内藤哲也率いるロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの一員でもある。
ヒロムの左右の手首にはバンデージが巻かれていて、「夢」という文字がたくさん書かれていた。
本人は「自分で書いたんじゃない、朝起きたら勝手に書かれていた」と笑った。
「この夢のためにな。オレは怖いもん知らずだ。それがオレの唯一の取柄。そんなオレがこの“BEST OF THE SUPER Jr.”の栄光をつかんだ。うれしいよ。オレは“BEST OF THE SUPER Jr.”を(IWGPジュニアヘビーの)挑戦者決定リーグ戦にはしたくない」
でも、ウィル・オスプレイとは戦いたい。オスプレイに勝ちたいという気持ちが「挑戦」という言葉になって出てしまう。
「ごめん。今年、オレは何回もオスプレイに挑んでいる。だけど、もう一度、挑ませてくれ。ウィル・オスプレイ、オマエは世界最強のジュニアだ。でもオレも、たった今、こうして世界最強のジュニアになった。どっちが本当の世界最強なのか、決着つけようぜ」