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大谷シフトに、1回限定の先発投手。
メジャーは野球の常識を常に疑う。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2018/06/02 11:00
メジャーでは守備シフトの常識に対する挑戦が常に進行している。野球という競技は進化しているのだ。
大谷翔平に対して、右寄りの守備シフト。
やがて彼は「オルティス・シフト」の応用バージョンを他球団の左打者相手でも使うようになった。次に下位打線の打者でも似たようなシフトを使うようになった。
やがて、それまではあまり注目されていなかった右打者にも「極端な守備シフト」を敷くようになった。そして、「極端な守備シフト」は今やメジャーリーグで恒常化されるようになった。
それはもちろん、新人・大谷翔平にも試された。
5月26日のヤンキース戦の6回、大谷が無死一、三塁のチャンスにトミー・ケーンリー投手から放った中前へ抜けようかというゴロは、ディディ・グレゴリウス遊撃手に難なくさばかれてアシストなしの併殺打となった。
8回1死走者なしの場面でA.J.コール投手から放った二遊間へのライナー性の打球も、グレゴリウスにワンバウンドで上手くさばかれて遊ゴロとなった。
二塁手が右前の芝の上、遊撃手が二塁ベースの後ろ、やや右寄り、三塁手が遊撃手の定位置辺りにいるという「大谷シフト」が機能したわけだ。
『普通の守備位置ならセンター前ヒットだったのに』と思った人は多かったかも知れないが、アウトになったのは偶然ではない。大谷の打球方向はすでに(少ないながらも)データがあり、ヤンキースの内野陣がそれに合わせた「守備シフト」を敷いただけの話である。
メジャーは有効な策を見つけると徹底的。
一度、成功例を作れば、メジャーリーグはとても執拗になる。「ここが弱点」と分かれば徹底的にそこばかり攻める。「この守備シフトが効果的」。「この配球が有効」と分かれば、ほぼワンパターンになる。
今後も「極端な守備シフト」を敷いてくる球団は現れるはずで、その(文字通りの)壁を乗り越えていかねば、大谷はこれからも「いい当たりが正面を突いた」アウトを積み重ねていくことになる。
さて、「極端な守備シフト」を広めたレイズは、フリードマンが去った後も「急進的な野球観」を「いかに実用化するのか?」を前提にしたチーム作りを実践している。彼らはヤンキースが極端な守備シフトで大谷の2本の安打を防いだ一週間前の19日、奇しくも大谷のいるエンゼルス戦でも奇策を用いた。