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2冠達成に王手の千葉ジェッツ。
1年前の教訓から、言い合いせずに。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2018/05/25 16:30
琉球との2戦目では9得点と、PG富樫に次ぐ7アシストを記録した小野。キャプテンとしてチームをけん引する。
「これじゃあ去年と一緒だぜ」
小野は謙遜するようにチームメイトの存在を口にした。
「1試合、1試合の重みがCSは違うと思うので。そこで崩れたら去年と同じことだと思います。実は(今季クォーターファイナルの)川崎戦の2戦目でちょっと、チームとして言い合う部分があったんです。
でも、そこで文男が『これじゃあ去年と一緒だぜ』と言ってくれた。僕はそういうところに、チームとして全員が成長しているんじゃないかなと感じています」
自分たちの戦いが出来なくても、流れが来るまで耐え忍ぶ。チームの輪がほどけそうになれば、気づいた者が声をかける。これこそが、Bリーグが開幕してから2年近くかけてチームが積み上げてきたものだ。
5月26日に横浜アリーナで行なわれるファイナルの相手はアルバルク東京に決まった。千葉が制した天皇杯のファイナルラウンドには、BリーグのCSベスト4に進出したなかでアルバルクだけが出場していなかった。
今度のファイナルは、真の日本一を決めることになる。アルバルクは、今シーズンの千葉が唯一、2勝4敗と負け越している。簡単な試合とはならないだろう。
“応援によってチームを勝たせよう”
中立地で行なわれるファイナルでは、些細なことが勝負を分ける。それは何だろうか。
千葉の平均観客動員数は、Bリーグ開幕前から数えて3年連続でNo.1となっている。ただ、これまではむしろ、選手たちのプレーによって、千葉のファンが乗せられるような状況が目立った。
クラブは「アグレッシブなディフェンスから走る」という明確なスタイルを掲げている。ディフェンスで奪ったボールを素早くゴールにつなげる展開が、会場に訪れる人たちの心に響くと考えていたからだ。派手な演出、観客の声に耳を傾けて日々改善していく姿勢とともに、そうしたスタイルが人々を惹きつけていたのは間違いない。
以前は破壊力のある攻撃や、派手なプレーに盛り上がってきたのが千葉のファンだった。しかし最近では“応援によってチームを勝たせよう”という空気が出てきた。彼らもまた、成長を続けているのだ。