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西武打線はなぜこれほど圧倒的か?
秋山翔吾は長距離打者の繊細さに感謝。
posted2018/05/03 08:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
スターティングメンバーに、ずらりと3割打者が並ぶ。開幕戦で11得点。その後も大量得点で連勝を伸ばし、チーム総得点は2位に50点以上の差をつけた159点(以下成績はすべて4月30日現在)。4月18日から25日までは5試合連続で9得点以上を挙げ、パ・リーグの新記録を樹立した。
4月25日には、昨年まで鬼門だったヤフオクドームでバンデンハークから10得点を奪いノックアウト。2位の北海道日本ハムに5.5ゲーム差をつけて首位を走っている。
これまでも『打力では12球団随一』と言われ続けてきたライオンズだが、ここまでの破壊力を誰が予想しただろうか。
「僕がプロに入ってから、これほど打者一巡のイニングが多くて、大量得点を取れる打線は記憶にないですね」
プロ入り13年目を迎え、2008年の日本一を経験している炭谷銀仁朗も驚きを隠せない。
バットに当たったところで“やめる”感覚。
得点力がここまでアップした要因は、いくつかある。
主軸、浅村栄斗や山川穂高、森友哉らの活躍はもちろんだが、昨シーズン終盤から打撃好調をキープし、今シーズンもゆうに3割を超える打率を残している炭谷の存在も見逃せないだろう。
守備が重視されるキャッチャーという立場もあり、これまでは、昨シーズンの2割5分1厘を除けば、1割台から2割台前半の打率でシーズンを終えることが多かった。そんな炭谷が3割を越える打率を残すことで、さらにチャンスが広がり、上位を打つ秋山翔吾、源田壮亮がランナーを返すシーンが今シーズンは増えている。
炭谷は言う。
「昨年の夏くらいから、打席でうまくタイミングが取れ出したんです。いい感覚になった。うまく説明できませんが、イメージ的には、ボールがバットに当たったところで“やめる”感じです。“振り回さない”ともちょっと違うんですよね。勝手にフォローはするので、“バットにボールが当たって終わり”という感覚で打っています」
強く振り抜いていたフォームを、テイクバックを最小限にし、バットをボールに“当てる”イメージで振るように変えた。もともとチーム1、2を争うパワーの持ち主だった炭谷にとって、その“当てたところでやめる感覚”がヒットを量産するきっかけとなった。力まなくても当たればボールはヒットゾーンへと飛んだ。