月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
ハリル解任報道の“味付け”で分かる、
各スポーツ紙ビミョーな立ち位置。
posted2018/05/01 17:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Koji Watanabe/Getty Images
「ハリル 日本協会に復讐 韓国代表監督に就任!?」
大きな見出しが夕刊スポーツ紙の東スポに躍った。サッカーに詳しくない読者でも興味を惹かれる記事だろう。
夕刊紙は朝刊スポーツ紙と同じことを書いても仕方ない。タイムラグがあるからだ。多くの読者は「ハリル氏が会見を行った」という基本的な事実を知っている。ニュースはじゅうぶん消費されている。
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ではどうするか。事実や論評だけではなく、いかに変化をつけた記事を書くか。これが夕刊紙やタブロイド紙の肝。「その切り口があったか」と思わせたらひとつの芸である。
「ハリル 韓国代表監督に就任!?」なんてその醍醐味のひとつだろう。
東スポはどうやってこの記事を生んだのか?
東スポは「まさかの方法で日本に“復讐”する可能性も出てきた」とし、
《「韓国協会がロシアW杯後の代表監督として招聘する動きがある。韓国内には日本からの“引き抜き”にアレルギーがある一方で、さまざまな面でメリットのほうが大きいとの見方もある。実現もあり得るのではないか」と、韓国にもパイプを持つJクラブ強化担当者は指摘する。》
と書いた。
一般読者でも韓国は日本のライバルチームだと知っている。だからよくぞこの切り口に気づいたと思う。そしてよくぞ「韓国にもパイプを持つJクラブ強化担当者」に気づいて取材したと思う。
そう聞かれれば「そんな可能性は100%無い」とは誰だって言い切れない。となれば「まさかの方法で日本に“復讐”する可能性も出てきた」という書き方もまったくのウソではないことになる。
こうして興味をひく記事が1本成立する。
では、朝刊スポーツ紙は今回のハリル氏の会見(4月27日)をどう伝えたか。