炎の一筆入魂BACK NUMBER
黒田博樹の引退から2年――。
広島に次のエースは出てくるか。
posted2018/04/29 08:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
今、あらためてあの背番号15の背中の大きさを感じさせる。
'18年セ・リーグペナントレース序盤、今年も2連覇中の広島が主役を演じている。ただ勝率や順位とは別に、危うさもはらんでいる。
今季両リーグともに見られる「打高投低」は広島にも言える。24試合を終えた時点で、1試合平均4.8得点を挙げる一方、1試合平均4.1失点を喫している。打線がチームの原動力となっている。
先発は苦しんでいる。柱として期待された薮田和樹が登板2試合で中継ぎへ配置転換となり、開幕投手の野村祐輔も背中の張りを訴えて4月27日に出場選手登録を抹消された。
苦しい台所事情は数字が物語る。先発の防御率の指標とされるクオリティースタート達成率は50%。先発の防御率は4.50。先制点を許し、得点後の失点も散見される。何より四球が絡んだ失点が目立つなど内容が良くない。
どれだけ守備の時間が伸びても……。
1試合平均152球を要す投球リズムは、攻撃や守備にも影響する。それでも野手陣は根気強く、諦めることなく打って援護し、守って盛り立てる。勝利のために、攻守にサポートを惜しまない。
特に二遊間を守る田中広輔、菊池涼介の2選手は1球1球、ポジションを変え、バッテリーにサインを送るなど、守備の時間がどれだけ長くなっても集中力を切らさない。
「1試合終わったときにはドッと疲れが襲ってくるけど、それでもやらないといけないから」
開幕から連続無失策を継続する菊池はさらりと言う。どれだけボール球が続いても、野手は次の1球を信じて守っている。
苦しい投手事情だからこそ、“エース”と呼ばれる存在の必要性を感じる。
一昨年は黒田博樹氏がいた。新井貴浩や石原慶幸が「絶対的なエース」と認める存在感があった。引退したばかりの昨年はまだ、ともにプレーした投手たちは黒田の残像を追うことができた。