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川内優輝、ボストンマラソン優勝!
市民の星から「世界のKAWAUCHI」へ。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKeith Bedford/The Boston Globe via Getty Images
posted2018/04/18 17:20
ケニア人選手ら世界のトップランナーをはるか後方に従え、名門大会ボストンマラソンのトップを快走する川内優輝。
駆け引き、粘り、ズル賢さなどすべてを出し切った。
ライバルの少ない地方や海外のレースでは、川内はスタートから独走になることも多い。
またペースメーカーのついた高速レースでは、自己ベストがアフリカ勢に劣る川内はタイムを狙って粘るというレース展開が多い。
そのため世界選手権やアジア大会、ニューヨークシティマラソンなどを利用して、高いレベルで駆け引きを学び続けた。
2017年8月のロンドン世界陸上の前に川内は「ニューヨークシティマラソンから学んだことはとても大きい。ランナーとして成長させてもらった。あとはレースで活かすだけ」と話していた。
世界陸上は9位で入賞を逃したが、今回のボストンマラソンで、これまでのレースでエリート選手から学んだ駆け引き、粘り、ズル賢さなどすべてを出し切り、歓喜のゴールに飛び込んだ。
今大会では市民ランナーたちが大活躍。
今レースではエリート部門は男子は招待選手25人中14人、女子は16人中9人が途中棄権。アフリカ勢で完走したのは男女17人中3人。惨憺たる完走率も悪天候を加味すると「仕方ないのかな」と同情しそうになる。
しかし参加者2万5822人のうち95.5%のランナーが完走している事実を見ると、エリートランナーと市民ランナーとの違いが明確に分かる。
ボストンマラソンは参加標準タイムがあり、それを切らないと出場できない。市民ランナーにとってボストンは夢であり、目標の舞台。雨が降っても雪が降っても走りきる、そんなランナーがほとんどだったのだろう。
川内は持ちタイムや実績はエリート枠だが、レースに臨む姿勢は市民ランナーと同じ。絶対に最後まで諦めないで走り抜く。ほかの2万5821人のランナーと同じ気持ちでレースに挑んだ。
市民ランナーの夢の舞台で「市民ランナーの星」と呼ばれる川内が優勝。女子も2位と5位のランナーは看護師、4位には高校のスペイン語教師と川内と同じ市民ランナーが入ったが、多くのマラソンファンや市民ランナーたちが自分のことのように喜んだのは言うまでもない。