スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平と同世代のライバル。
日本の天才と競うMLBの天才たち。
posted2018/04/07 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
「二刀流」大谷翔平が快調なスタートを切った。開幕7試合を経過したところで、投手としては6回を投げて3失点、1勝0敗、防御率4.50。被安打は3で奪三振は6。打者としては3試合に出場して14打数6安打、2本塁打、5打点。上々の滑り出しといっても過言ではないだろう。
もちろん、投打ともまだ完璧というわけではない。投手としては、変化球の嫌らしさが足りない。打者としては高目の速球に対して不安が残る。その辺は今後の課題だが、今回はとりあえず、さまざまな選手と比較して大谷の将来を占ってみたい。
最初に引き合いに出したいのは、ご存じベーブ・ルースだ。ルースが投打の二刀流で活躍したのは、レッドソックス時代の1915年から'19年にかけてだ。開幕時の年齢でいうと、20歳から24歳にかけて。
スタッツを振り返ると、活動の形態はわかりやすい。最初は投手として活躍し、しだいに打者としての比重が大きくなっていく。
投球回数でいえば、最多は'17年の326回3分の1(24勝13敗)だ。最少は'19年の133回3分の1(9勝5敗)。同じ年の打撃データを見ると、'17年が123打数40安打、2本塁打。'19年は432打数139安打、29本塁打。歴然とした差がある。
ルースは投手としてもシーズン23勝。
「投手」ルースのピークは、'16年と'17年だった。'16年の投球回数323回3分の2は、'17年に劣らない。23勝12敗、防御率1.75、9完封というスタッツも素晴らしい。とりわけ年間9完封という数字は、ア・リーグの左腕投手ではいまなお最多記録だ('78年、ヤンキースのロン・ギドリーに並ばれた)。
投手の仕事が減ったのは、投球の質が落ちたからではない。'18年、ルースは11本塁打を打って、初の本塁打王となった。翌'19年には他を圧倒する29本塁打(ナ・リーグ本塁打王ギャヴィ・クラヴァスは12本。ア・リーグ2位のジョージ・シスラーは10本)。こうなると、観客はルースの本塁打を目当てに球場へ押しかける。球団側も、「投手ルース」より「打者ルース」を前面に出そうとする。
以後の歴史は、みなさんご承知のとおりである。翌年ヤンキースへ移籍したルースは、史上最強の長距離打者として本塁打の山を築き上げる一方、投手としては、'20年から'33年の間に合計31イニングスに投げただけだった。