スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平と同世代のライバル。
日本の天才と競うMLBの天才たち。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/04/07 08:00
打っても良し、投げても良し。大谷翔平とともにほかのメジャー有望株にも注目したい。
世代の近いところで比較できる投手は?
大谷翔平は、ルースの通った道を歩むのだろうか。それとも正反対に、投手の仕事をメインとしていくのだろうか。あるいは、二刀流を完遂した選手として球史に名を刻むのだろうか。結論を出すのは時期尚早なので、世代の近いところで比較の対象を探ってみよう。もちろん「二刀流」はいない。投打それぞれに、似た要素のあるタイプと比べてみたい。
投手で比較したいのは、ジェイコブ・デグロム('88年生まれ)、ノア・シンダーガード('92年生まれ)、アーロン・ノーラ('93年生まれ)の3人だ。大谷は'94年生まれ。
身長・体重でいうと、大谷が193センチ/92キロで、デグロムは193センチ/81キロ、シンダーガードは198センチ/108キロ、ノーラは188センチ/88キロと、そう変わりはない。3人とも右腕で、得意の球種は少しずつ異なる。
デグロムは高速スライダーが主武器で、シンダーガードはシンカーが決め球、ノーラは速球とカーヴの緩急差で勝負する。
デグロムは新人の年の2014年に、22試合に先発して9勝6敗の成績を残した。防御率は2.69。2年目は30試合に先発して14勝8敗、2.54。'15年にデビューしたシンダーガードも、数字は似ている(9勝7敗、3.24と14勝9敗、2.60)。
大谷がもっと“したたか”になれば。
一方、大谷と1歳ちがいのノーラはやや異質だ。'15年に22歳でデビューし、6勝2敗、3.59→6勝9敗、4.78→12勝11敗、3.54と着実に力をつけてきた。
4人のなかでは、シンダーガードが最も速い球を投げる(大谷は2番目)。スプリットを使うのは大谷ひとりだ。ただ、球種が多ければいいというものではない。縦の変化、横の変化、緩急の差……その多様な組み合わせとなると、大谷の投球術にはまだナイーヴなところがある。これがもっとしたたかになり、悪辣と感じさせるほど打者を翻弄できるようになれば、「投手大谷」は完成形に近づくのではないか。