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F1ホンダ新体制は正念場の4年目。
「働き方を変えていかないと……」
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/04/08 07:00
今季からテクニカル・ディレクターとして指揮を執る田辺豊治。第2期F1時代にはゲルハルト・ベルガーのエンジニアも務めた。
サーキットで不眠不休の作業続き。
その真剣な眼差しは、筆者が長谷川を取材してきた中で最も鋭かっただけでなく、復帰以後、ホンダを取材してきた中でも経験したことがないほどの気迫を感じたものである。部下の責任を負うのがリーダーだとしたら、長谷川こそ真のリーダーだったと筆者は思う。
今季開幕戦を最後に現場を去ったのが、中村聡チーフエンジニアだ。中村がF1のプロジェクトに加わったのは、ホンダが復帰を発表する直前の'13年4月。量産のエンジン開発からF1のプロジェクトに異動した当初は、「またレースがやれる」と眠れないほど喜んだが、プロジェクトに加わってからは、眠る暇もないほど開発作業は多忙を極めた。
マクラーレンと初めて組んでサーキットで行う実走テストとなった'14年11月のアブダビ合同テストでは、いまでも忘れることができないほど厳しい経験をしたという。
「テスト前日の準備からトラブルに次ぐトラブルで、結局3日間、ホテルに帰ることができず、サーキットで不眠不休で作業を続けました。最終日はフラフラで立ってられない状態だった」
「働き方も変えないと。ただ一生懸命では」
そのような経験をしたからこそ、中村はこのままではいけないのだと説く。
「技術的にも変えなければならないことはありますが、いまこそホンダは働き方も変えていかなければならないと思います。ただ一生懸命やるだけでは、永遠にライバルには追いつけない。優先順位をつけて無駄を省いたり、時間の使い方を工夫するなど、意識改革も進めていかなければいけない時期に差し掛かっていると思う。
もちろん、研究所の人間は誰もさぼっているわけじゃない。みんな一生懸命、開発しています。でも、いまのやり方では追いつけないことはこの3年間でわかりました。何かを変えて、違うやり方に挑戦しなければいけない時期に来たと思います」