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F1ホンダ新体制は正念場の4年目。
「働き方を変えていかないと……」
posted2018/04/08 07:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
春は出会いと別れが交錯する季節だ。
F1復帰4年目のシーズンを迎えるホンダでも、今年に入ってさまざまなスタッフがF1の現場を離れていった。
まず長谷川祐介元総責任者だ。'17年12月にホンダは体制変更を行い、これまでF1プロジェクトを統括してきた総責任者が廃止された。それに伴い、長谷川はF1から離れ、量産車向けの先進技術開発担当に活躍の場を移した。
4年目以降に飛躍するため、新しい技術にチャレンジしたものの、結果は不発。マクラーレンとのコンビも解消となり、半ば責任を取る形での退任となった。総責任者だから、その責任を負って退任する判断は決して間違っていないが、昨年の不振が彼だけの問題ではないことだけは、はっきり言っておきたい。
3年が経っても、なおトラブルを起こし、性能も追いつけないという根本的な原因は、F1の開発を行なっている栃木県さくら市にある研究所(HRDSakura)全体の問題である。復帰2年目に研究所にやってきた長谷川は、さまざまな改革を行い、そのひとつが昨年投入した新しい技術を用いたパワーユニットだった。
だが、何事にも産みの苦しみはある。それでも、長谷川は遅々として進まない開発に愚痴をこぼすようなことは一度もなかった。
「楽観的に仕事している人間はいない」
忘れられない思い出がある。
昨年のロシアGPでのことだ。バーレーンGPでトラブルが多発した直後のグランプリだったため、ある記者が「ホンダはサラリーマン化しているとか、以前のような情熱がなくなっているのではないかと批判する声もありますが……」と問いただした。すると長谷川は声を震わせ、こう答えた。
「知見が足りないとか、経験に乏しいという批判は甘んじて受けますが、われわれも必死でやっています。確実に言えることは、楽観的な気持ちで仕事をしている人間はさくら(HRDSakura)にはひとりもいない。それだけは言っておきたい」