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エースになったら景色も変わる。
ロッテ2年目・酒居知史の場合は?
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/04/01 07:00
酒居は龍谷大平安、大体大、大阪ガスを経て'17年ドラフト2位で入団。新人だった昨季は19試合に登板して5勝1敗、防御率3.13。
酒居と清水の関係はプロ入り直後から。
酒居と清水の関係はプロ入り直後から。酒居の出身校である大阪体育大学でコーチを務める岡泰秀と、清水が「プロスポーツ昭和50年会」で旧知の仲だったからだ。
酒居のプロ入りが決まると、岡は清水に連絡をとった。
「今度、うちの酒居が(ロッテに)行くからよろしく頼むな」
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そのときから清水にとって、酒居は気にかける後輩の1人となった。
それから1年が過ぎ、清水が千葉ロッテの一軍投手コーチに就任。OBと現役選手の立場から、より直接的な指導が可能となった。
筆者も酒居から、清水とのエピソードを聞いていた。それもあって、さっそく清水に前述の話をぶつけてみることにした。すると、清水は意図をこう説明した。
「長い期間プロで活躍するためには、最後は必ず真っ直ぐの精度を高めるところに立ち返ります。シーズン前、ほとんどの投手が『もう1回、真っ直ぐをしっかり投げよう』とやり直そうとするんですね。僕も現役時代そうでしたし、周りの一流と呼ばれるピッチャーすべてがそうでした。変化球を活かそうと思ったら、強い真っ直ぐが必要になる。そうした経験も踏まえて、酒居にはもっとそこを磨いてほしいと言ったんです」
そう話す清水の口調には、酒居への親心のようなものを感じた。
「おはようございます」の挨拶1つでも。
清水が酒居に伝えたいのは、ピッチングの技術だけではない。将来、チームの柱として活躍するための心得を伝授したいと考えている。
「活躍すればするほど、人に見られる回数は増えていきます。当然周りの見る目も厳しくなるし、期待値も高くなる。だからその分、ユニフォームを着ているときは勿論ですけど、グラウンドを出てからも色々なことに気をつけないといけないと僕は思うんです。
酒居に関してもそうです。昨年の後半戦で5つ勝ったことで、今年も期待されるし、少しずつ周りの見る目も変わっています。変に足元をすくわれないように、まずは地を固める。例えば『おはようございます』の挨拶ひとつをとってもハッキリと相手に聞こえるように言いなさい、と話しました。基本的なことなんですけどね。
活躍しては、自分の意図しないところで色んな見方をされます。そこで彼には苦労してほしくないんです。それは酒居だけじゃなく他の若い投手全員に言っていることなんですが」