月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
スポーツ新聞に愛された男――。
「劇薬」貴乃花親方の功績とは?
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byJMPA
posted2018/04/01 09:00
角界の改革を進めるはずの貴乃花親方の、その足元で起こった暴行事件。親方の無念、いかばかりか……。
貴乃花親方がいたからこその改革の契機。
弟子の暴行事件により潮目が変わり、貴乃花親方は告発状を取り下げて謝罪。親方衆からは場所中の出勤態度を含めて「解雇」相当の厳罰を求める声も出た。
29日の理事会で決まった処分は『貴親方 年寄へ2階級降格』『3か月で理事から5階級月給64万円ダウン』(スポーツ報知・3月30日)。
今場所の貴乃花は1人でかき回し、失速していったように見える。
ただ、ここで紹介したいのは日刊スポーツの「記者の目」だ(3月24日)。
「研修会欠席し不祥事 重い監督責任」というタイトル。
「まさに貴乃花親方の独り相撲といえる」
「暴力問題再発防止を掲げた2月の研修会を貴乃花親方は欠席し、その結果、弟子が暴力問題を起こした監督責任は重い」
と前半で貴乃花に対して厳しく書くが、
「そもそも貴乃花親方がいなければ、元日馬富士関が書類送検されるどころか、暴行が表面化することもなかったかもしれない」
「そうなれば研修会も開かれず、貴公俊の暴力問題発生と同日に発表された、峰崎部屋の暴力問題が発覚することもなかっただろう」
と、「貴の功績」を振り返る。最後は、
《ここ5カ月ほど続く相撲界の危機感は生まれず、暴力根絶の雰囲気も生まれなかったはず。手法には賛否両論あるが、貴乃花親方という「劇薬」がもたらした約5カ月の効果が出るのは数年後かもしれない》
劇薬を服用しつつ、相撲協会は変わっていくしかない。
貴乃花親方は今後は理想を掲げ、かつ現場でも文句を言わせない振る舞いで突き進むしかない。各記事を読んでそう思った。
それにしても荒れる春場所という格言はやっぱり健在だった。