福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が日本代表の問題点を指摘。
レベルの差を認めて、できることを。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byGetty Images
posted2018/03/26 12:30
E-1選手権に続き負傷交代の憂き目にあった大島。ただしピッチに立っていた時間帯は可能性を感じた。
柴崎、大島のような出し手が生きれば。
ただ、そのウクライナ戦ですが、誰が出るかが読めないところです(笑)。マリ戦で出番がなかった原口あたりは起用されるでしょうし、個人的にはボールの出し手となれる柴崎を出してほしいな、と。
マリ戦でもう少し見たかったな、というのは大島でした。前半途中でふくらはぎを痛めて負傷交代してしまいましたが、彼が出ていた時間帯は、中盤でリズムを作れていた。
守備で頑張りながら、質の高いボールを前に送れるのが大島の武器です。高い判断力はフロンターレで鍛えられていますし、必ず前を向いてプレーしよう、ボールを繋げようとしている。だからこそ受け手として良い形、欲しい形でもらえる一瞬を見逃さない巧さがある。
具体的にその巧さを説明すると、大島はただ単にパスを出すのではなく、ちょっと仕掛けて相手を食いつかせたり、パスが通るか通らないかギリギリのタイミングを狙える。そういった工夫があったから、リズムがつかめていたんですね。
その役割を担っていた大島が交代して以降、前線にパスが入らなくなりました。パスを入れるタイミングがつかめず、最終ラインでボールが行き来したシーンは多かった。それを踏まえれば、中盤の3人のうち1人はパスを出し入れできるタイプがいた方がいいのでは、と感じます。
森岡らの持ち味をそれぞれ生かすべき。
大島が負傷したことによって、ウクライナ戦で柴崎が出る可能性があります。ここでも「柔軟性」が試されます。マリ戦では森岡がトップ下に入りましたが、彼も大島と同じく足元でボールを受けての仕事が得意なタイプです。
運動量を増やして裏への抜け出し、プレスバックなどをこなしましたが、走ることで体力を失っている印象がありました。攻撃面でもいいタイミングでボールがもらえないから相手を背負ってプレッシャーをかけられていた。
森岡以外にも原口や宇佐美、中島ならドリブルで勝負させたり、本田なら足元に預けて、フィニッシュまで持ち込ませる。得意な形でパスを預けられるセンスを持つ大島、柴崎の存在が今こそ必要です。
個人を生かすことでチーム全体のレベルを引き上げられるか。ウクライナ戦ではそういった面をもっと出してほしいですね。
(構成・茂野聡士)