濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
K-1を背負う“覚悟”の勝利か。
武尊、圧巻の3階級制覇!!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2018/03/24 11:00
1回戦から決勝まで、体格不利を覆して優勝した武尊。
「小宮山相手にこれができちゃうの!?」
筆者は試合を見ながら、記者仲間と「え、マジ?」、「小宮山相手にこれができちゃうの!?」と言い続けていた。本当に驚くしかない試合だった。
「小宮山選手のスタイルは分かっていたので、強引にでも(間合いに)入っていきました」と武尊は言う。しかし、これまで多くの選手がそれをしようにもできなかったのだ。
小宮山の巧さを凌駕した圧力、その本質は何だろうか。
1つには、武尊の攻撃の“構成力”が挙げられるだろう。右ボディから左フックへのコンビネーション、10代のムエタイ修行で身に付け、そこから磨いてきたというヒザ蹴り、さらに三日月蹴りなど、武尊はボディ攻撃の名手でもある。ボディへのダメージを意識させるから、顔面へのパンチも当たる。
「前に出ていれば、もらっても倒れない」
もう1つの要素は“覚悟”や“決意”の大きさだ。安易な精神論は避けたいところだが、武尊を語る上では欠かせない。
「打ち合いになったら、前に出た選手が勝つ。前に出ていれば、もらっても倒れない」
武尊は、そんなプリミティブな格闘技観の持ち主だ。
単純に前進しながら攻撃するほうが下がりながらよりも威力があるわけだが、武尊にとってはファイターとしての姿勢そのものにつながる“信仰”でもあるのだろう。3階級制覇への挑戦も、その表れではないか。
大会前日の会見で、彼は「明日で格闘技人生が終わってもいい」と語っている。試合後には、観客にこう語りかけた。
「僕は子供の頃からK-1ファイターになりたくて、アンディ・フグが憧れでした。でも(旧)K-1がなくなって、K-1を知らない人たちも出てきた。“今もK-1やってるの?”って言われて悔しかったこともあります。
でも、こうしてさいたまスーパーアリーナに戻ってこれた。超満員になった。今日からは“新生”って言葉はいらないと思います」
これからは地上波ゴールデンタイム中継を目指すと言う。武尊にとってはK-1に出ること、K-1で勝つことではなく、K-1を大きくすることが目標なのだ。やはり“前に出る力”が違うと言うしかない。