武尊は体格やパワーで不利になるはず……。

　他のトーナメント参戦選手は、もともと60kgで活躍してきた強豪ばかり。武尊は体格やパワーで不利になると思われた。

　中継の解説を務める魔裟斗は、大会前に「武尊は打ち合いをやっちゃうと厳しい」と分析していた。

　だが、武尊はそれをやった。

　1回戦、前王者の大雅をKOしたことがあるスタウロス・エグザコスティディスを正面からの殴り合いで突破し、準決勝はKrush王者の郷州征宜をKO。パンチの連打でねじ伏せるような倒しっぷりだった。

　決勝では、過去にRISEのベルトを巻き、多団体トーナメント『BLADE』でも優勝している小宮山工介を倒してしまった。その結末、試合内容は、小宮山の試合を長く見てきた者にとって衝撃的としか言いようがなかった。

試合巧者・小宮山を封じた凄まじい圧力。

　小宮山は空手出身。バックステップ、サイドステップを使って遠い間合いをキープし、ロングレンジの攻撃をヒットさせていくスタイルが持ち味だ。バックスピンキックなど大技も得意としており、武尊のような“前に出て倒す”タイプの選手にとっては厄介な相手と言っていい。

　だが実際のリング上では、武尊が小宮山を圧倒した。

　数々の選手を翻弄してきた小宮山のステップが、武尊の凄まじい圧力で無効化されたのだ。武尊の前進をさばききれず、小宮山は下がっては攻撃を受けるしかなかった。最終3ラウンド、小宮山はポイントを奪い返す必要があったが、しかし真っ向勝負になれば武尊の土俵だ。

　結果、ボディブロー、ヒザを中心に3度のダウンを立て続けに奪ってのKOである。「トーナメント決勝でKOしたのは初めてです」と武尊。それをキャリア最重量の相手に囲まれてやってのけたのだ。

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