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設楽悠太らの成長を生んだ「MGC」。
駅伝とマラソンの関係性が変わる?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2018/02/27 14:00
ゴール後、あらためて時計を確認した設楽悠太。この後道に倒れこんだが、達成感に満ち溢れていたことだろう。
神奈川大の鈴木健吾は、3年生からフルマラソンへ。
大学生の挑戦も、成功だった。
箱根駅伝で活躍した神奈川大の鈴木健吾は、初マラソンで2時間10分21秒の好記録で、19位でフィニッシュした。4年間鈴木を指導してきた大後栄治監督は、
「健吾の“卒業論文”、良かったと思います。単位を出そうと思います」
と笑顔を見せた。
大後監督は、箱根駅伝の成功体験がフルマラソンへの挑戦につながったと話した。
「健吾が3年のとき(2017年の箱根駅伝)、2区で一色君にも勝って区間賞を取りました。その走りを見て、大学4年生で同じ目標を与えていても成長が止まってしまうと感じて、フルマラソンに挑戦しようと。学生を指導して30年になりますが、エリートランナーをフルマラソンに向けて準備させるのは、私にとっても新しい挑戦でしたし、健吾との“出会い”に感謝したいと思います」
「大学の指導者にとって駅伝は大事だけど」
一方で、大学生としての限界も見えたと話す。
「35kmまではよく食らいつきました。そこから離されてしまいましたが、これは十分な準備時間が、初マラソンの大学生ではまだ確保できなかったということでしょう。これから実業団に入って、きっと成長してくれると思います」
大後監督も、鈴木から大きな刺激を受けたという。
「大学の指導者にとって、駅伝はものすごく大事です。学校の名誉、選手の将来、いろいろなものがかかってますから。ただ、それを繰り返していくばかりではキツくなる。健吾のような素材を育てられるチャンスをもらったのは、私にとってもプラスになりました」
選手が実業団で結果を残すためには、大学で土台を作ることが必要だ。大後監督をはじめ、いま大学の監督たちはそのことを意識している。
設楽、一色、鈴木。
大学生から大人へと成長していくプロセスを見守っていこうと思う。