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設楽悠太らの成長を生んだ「MGC」。
駅伝とマラソンの関係性が変わる?

posted2018/02/27 14:00

 
設楽悠太らの成長を生んだ「MGC」。駅伝とマラソンの関係性が変わる?<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

ゴール後、あらためて時計を確認した設楽悠太。この後道に倒れこんだが、達成感に満ち溢れていたことだろう。

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Atsushi Hashimoto

 東京マラソン2018は、大成功だった。

 東京オリンピックへの最終選考レースとなる「MGC」(マラソングランドチャンピオンシップ)への切符を手にしたのが、日本記録を樹立した設楽悠太(Honda)をはじめ6人。2時間10分を切った日本人選手が合計で9人を数え、「MGC」という仕組みを作ることでこんなにもレベルがアップするものかと、改めてマネージメントの大切さを思い知らされた。

 私が思うに、長らく男子マラソンが不振だった理由のひとつに、「23歳シンドローム」が挙げられる。

「新卒者」が実業団に入ってから、トレーニング方法などの違いで環境にアジャストメントできないままでいると、成績が伸びずに数年をロスしてしまう。すると、モチベーションも失い、20代で現役を引退することになってしまう。

 しかし、東京オリンピックという身近な目標が設定されたことで、指導者、選手たちのモチベーションが上がり、大学で土台を作った選手たちがスムースに実業団のスタイルに移行できている。

レースに出続けないと設楽はサボる!?

 成功例は、何と言っても設楽悠太だ。

 2014年に東洋大を卒業してHondaに入社すると、2015年に北京で行われた世界陸上では10000mの代表に。そして2017年にフルマラソンへターゲットを移してからは、設楽はとにかくレースに出続けることで、能力を研ぎすましてきた。

 今年に入ってから、レースに出ている数が尋常ではない。

1月 1日 ニューイヤー駅伝 4区22km 区間賞
1月21日 全国男子駅伝 7区 13km 区間賞
2月 4日 丸亀国際ハーフ 1時間1分13秒 2位(日本人トップ)
2月11日 唐津10マイル 46分12秒 1位

 あるHondaの関係者は、

「設楽は、とにかくレースに出し続けないとサボってしまうんで」

と笑うが、レースに出ることは強度、質の高い練習をしているのと同じことだ。

【次ページ】 練習で30km以上は走らず、月間走行距離も短い。

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