錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の復帰プロセスは上々だ。
アガシ、チャンらの成功例を再び!
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2018/02/23 11:00
五輪まっただ中でなければ、錦織の動向はもっと注目されていただろうが、復帰に向けて着々と歩みを進めているのは間違いない。
アガシ、チャンも歩んだ復活ロード。
錦織と同じく手首のケガに長年苦しみ、5年に渡って離脱と復帰を繰り返したファンマルティン・デルポトロは、1000位以下までランキングを落としたこともあったが、それでも下部ツアーからの復帰を試みたことはない。プロテクトランキングやワイルドカードを使ってビッグイベントに出場し続けた。
彼らとは違ったやり方を選んだ錦織だが、長い歴史の中には前例がないわけではない。成功例としては、まず1997年の11月に141位に低迷していた元王者アンドレ・アガシが挙げられる。約11年ぶりのチャレンジャー大会に2週出場し、準優勝、優勝という結果を経て、翌年にはトップ5に返り咲いた。
錦織のコーチであるマイケル・チャンは、停滞からの復活のきっかけをチャレンジャー大会に求めた経験が何度かある。27歳だった'99年に12年ぶりのチャレンジャーに出場したのが最初で、以降、ツアーの中にチャレンジャーを組み入れながら'02年には優勝もした。そうしたチャンの経験が今回の錦織の選択と無関係であるはずがない。
イバニセビッチが口にした錦織評。
もう1人紹介したいのが、2001年のウィンブルドン初優勝が最高のハイライトのゴラン・イバニセビッチ。同じ年の初め、100位以下に低迷していた元世界2位はドイツで約9年ぶりにチャレンジャー大会に出場した。準優勝だったが、1大会で5試合を戦ったのは実に2年ぶりのこと。5カ月後、ワイルドカードを得たウィンブルドンで4度目の決勝にしてついに頂点に立ち、伝説の王者となった。
そのイバニセビッチは、全豪オープン期間中、レジェンドの部に出場する選手たちが一斉にメディア取材に応じる機会に、復帰する錦織についての質問に丁寧に答えてくれた。
「来週のチャレンジャーで復帰すると聞いたよ。そこに間に合わせられるなら、多少無理をすれば全豪オープンに合わせることができたはずだ。でもそうしなかったところを見ると、最初から大きな結果を求めず、プロセスを大事にしたいと考えているんじゃないかな。焦っていない証拠だと思う。物静かなファイター、ケイらしい選択だ」