錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の復帰プロセスは上々だ。
アガシ、チャンらの成功例を再び!
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2018/02/23 11:00
五輪まっただ中でなければ、錦織の動向はもっと注目されていただろうが、復帰に向けて着々と歩みを進めているのは間違いない。
「手首に痛みを感じずに戦えた」(錦織)
錦織は自信喪失どころか「手首に痛みを感じずに戦えたことが何よりうれしかった」と安堵と喜びを語り、悲観的な声をよそに、予定通り翌週のダラスでのチャレンジャーに出場。そこで2週連続して同じ相手と1回戦を戦うという珍しいドローを得て、リベンジに成功する。元世界4位を倒してノビコフが得た自信を、錦織の冷静さと修正力が上回った。
2回戦以降も危ない試合はあったものの5試合を勝ち抜いて優勝。実戦を重ねるという大きな目的を達成した。戦った相手に150位内の選手はいなかったが、たとえば決勝の相手、22歳のマッケンジー・マクドナルドは全豪オープンで世界3位のグリゴール・ディミトロフとフルセットの大接戦を演じた選手だ。
優勝賞金は1万8000ドルで、日本円にして200万円足らず。グランドスラムの1回戦負けの半分にもならないが、そもそも賞金など頭にあるはずがない。世界4位までいったグランドスラム・ファイナリストが、24位という十分なランキングがあるにもかかわらず、わざわざチャレンジャー大会を復帰の舞台に選んだのだから。
そして1週空けて乗り込んだニューヨークでは、232位との1回戦に始まり、トップ100にランクされる2人に連勝し、アンダーソンとの一戦を迎えた。対戦相手のレベルが徐々に上がっていった理想的な過程は、チャレンジャー大会からの再出発の意図するところでもあっただろう。
ジョコビッチ、ワウリンカの復帰は……。
本来自分がいるべき最高の舞台、ビッグイベントで華々しく復帰したいのがトッププレーヤーの本心であるはずだ。ノバク・ジョコビッチもスタン・ワウリンカも公式戦としては全豪オープンで復帰した。
しかし、それぞれ4回戦、2回戦で敗退。ワウリンカはその後出場したソフィアの『250』では準決勝で129位のミルザ・バシッチに敗れている。メルボルンで復調の兆しが見えたジョコビッチは、韓国のチョン・ヒョンとの激戦に敗れた末、大会後に右肘の手術に踏み切った。痛みが残っているにもかかわらず全豪で復帰した胸中を、「僕の血がそうさせた」と語ったのは印象的だった。