マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
菊池雄星と大石達也のブルペン観察。
ドラ1の速球は残酷に好対照だが……。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/02/13 07:00
南郷キャンプで順調な調整を進める菊池。大石らとの投げ込みを見られるのがキャンプならではの楽しみだ。
投げる“目的”が想像できるピッチング練習。
大石は今年プロ8年目。最初の5年間は、痛めた右肩との闘いに終始していた。
それが、ここ2年間はフル回転とまではいかなくても、中継ぎの1イニングできっちり役割を果たしてきた。
一昨年が36試合で防御率1.71。昨年は20試合で防御率0.93。球団の方から、イニング数以上の三振を速球で奪っていたと聞いて驚いた。
隣りのマウンドで投げ込む菊池雄星のピッチングスタイルが豪快だから、その横で1球1球丹念に、ボールの回転を確かめるように投げる大石達也がとても地味だ。
しかし、明らかに、投げる“目的”が想像できるピッチング練習。
「練習」とは、いつもそうありたい。
そんな地道な基本動作の繰り返しで、速球の生命力を自らの技術として、体に覚えさせようとしている。
躍動感あふれる菊池雄星の投げっぷり。近い将来、メジャーでさらに大きな可能性に挑もうとする若い勢い。
そのすぐ隣りで、この国のプロ野球に生き残りを賭けて、投手の絶対条件である速球の生命力をより確かなものにしようとする根気強い試み。
どちらも、間違いなく「プロ」。
どちらも、同じようにプロなのだ。
20人から居並ぶ南郷キャンプの一軍投手陣の中で、たまたま同じ日の、同じ時間帯に、隣り合ってブルペンで投げあった菊池雄星、そして大石達也。
1年違いのドラフト1位で、同じ球団に進んだ2人が、今それぞれのスタイルでプロの歴史に足跡を残そうとしている。