オリンピックへの道BACK NUMBER
極寒と不安山積の平昌五輪だが……。
現場のボランティア、市民は温かい。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2018/02/12 08:00
様々な懸念はあれど、平昌の人々が五輪を盛り上げたいと思う気持ちは、ボランティアスタッフの評価を見れば分かるだろう。
盛り上がったバンクーバーと比べると不安はあるが。
IOCが2月3日に発表したところによると、チケットは75%の売れ行きで4分の1が売れ残っているのだという。9日に行なわれたフィギュアスケートの団体戦も当日窓口で販売されていたのには驚いたが、本格的にスタートを切っていないこともあり、オリンピックが始まる高揚感は、街にはないに等しいのだ。
選手や関係者も含め、ここ近年の大会最も評判のよかったのは2010年のバンクーバー五輪だった。同大会を知る人たちはその差を実感しているようだ。
バンクーバーでは開幕前から街中で公式、非公式を含めて様々なイベントが行なわれ、数多くの人でにぎわっていた。大会を待ちわび、楽しみにしている空気が充満していたのだ。冬季競技の大国らしく、各競技の試合会場にも大観衆がつめかけ、声援を送った。こういったムードもあって「バンクーバーは楽しかった」と語る選手は少なくない。
そのバンクーバーと対照的に、現状では不安感の漂う平昌大会だが、開幕後に雰囲気は一変するのか――それも大会の成否の鍵となる。
宇野昌磨は朝5時に起きて競技への準備開始。
また、アジア開催の大会ではありがちなことだが、通常の大会とは異なる競技時間が設定されている。例えばフィギュアスケートは夜に開催されるのが普通なのだが、午前中から競技がスタートする。逆に日中に実施することが多いスピードスケートは、夜間に開催されるのだ。
団体戦のショートプログラムに出場した宇野昌磨は、公式練習が午前7時頃からだったため、早朝5時に起きたと言う。
「すごい眠かったです」
ただ「その中で無理はしないようにしました」と、練習前のアップも軽めにしてに臨んだ。その調整法の結果、男子でただ1人100点を超える好発進につながったが、通常と違う時間帯に対応できるかがポイントとなる。それがあらためて分かる話でもあった。
このことは競泳をはじめ、アメリカなどでの時刻に合わせた競技時間になるだろう、2020年の東京五輪で突きつけられる課題でもある。