マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
2018年ドラフト会議を予想すると。
才能が多すぎて重複しない現象が!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/01/29 07:00
10番だった背番号も。秋季大会ではひとケタの6番になった根尾昂。投手か野手かはたまた二刀流か、プロの指名意図も気になる。
魅力的な選手がいすぎて分散する、という事態。
重複したのは、大阪桐蔭高・根尾昂内野手が楽天、中日、阪神、富士大・鈴木翔天投手がロッテ、広島、巨人。いずれも3球団の指名が重複して、厳正あみだクジによる抽選に持ち込まれた。
「ドラフト」に重複はつきものだ。
昨秋のドラフトでは、清宮幸太郎(内野手・早稲田実業高→日本ハム)に7球団、一昨年は田中正義(投手・創価大→ソフトバンク)に5球団、2014年には有原航平(投手・早稲田大→日本ハム)に4球団が重複している。
特定の選手に飛び抜けた能力があって多くの球団の指名が集中することもあるが、一方で、魅力的な存在が少ないことが“一極集中”の理由になっていることも多い。
しかし2018年のドラフトの場合は、ここ数年とは反対に、すべてのポジションに魅力的な選手が何人もいるせいで「1位入札」が分散するのではないか。今回の「ひとりドラフト」でも、そんな兆候がはっきり現れていると言ってよい。
さあ、1人ずつ紹介していこう。
昨年の「清宮幸太郎」のように、普段あまり野球を見ないおばあちゃんでも知っている国民的スターはまだ見当たらない。しかし、その実力がすでにプロ級に達しているか、寸前にまで及んでいる選手が何人もいる。足りないのは“ネームバリュー”だけであろう。
大阪桐蔭の根尾は“とっさ力”が素晴らしい。
「3球団重複」の2人からいこう。
大阪桐蔭高・根尾昂内野手(177cm76kg・右投左打)は、これまでの高校球児にはなかったタイプの選手だ。
本当の意味の“スーパーアスリート”。ほかのスポーツでも全日本級なのが貴い。
中学でスキー回転の全国チャンピオンになっている。間違いなく、野球のベースランニング以上のスピード、敏捷性、ボディーバランスに全身の連動性、さらに下半身の強靭さを必要とする極めて高難度なスポーツだ。
もっとよいのは、そこへ行ってみなければわからないコース路面の凹凸に、瞬時に全身で反応できる“とっさ力”。
打球が飛んできてみないと、どんなメカニズムを繰り出したらよいのかわからない野球と、ある意味でとても似かよった本質を持った競技のように思う。
飛騨高山のボーイズでは投手だった根尾昂が、大阪桐蔭では投手のほかにも外野、遊撃……と短期間に複数のポジションを、超高校級の技量を発揮してこなしてみせたのも、“スラローム”という競技で身につけた運動能力のおかげだったろう。
足首とヒザの柔軟性、地に根の生えたような下半身の粘り。走攻守に見せるスムースな体重移動。
すでに高校トップランクのプレーヤーであるが、根尾昂が隠し持つ能力はさらに計り知れない。