太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
太田雄貴会長の大仕事、全日本選手権。
フェンシング大会でダンスにLED!?
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byYasunobu Seo
posted2018/01/24 08:00
4年に1度オリンピックの時期にだけ見るスポーツ、という枠を超えてフェンシングが見られるようになるために。
男子フルーレ決勝戦が示す、勝負の怖さ。
そして、肝心の決勝戦6試合。
いずれも白熱した好試合となりました。
これはひとえに、1600人の観客のみなさんが作ってくださった環境があったから、です。
もし観客席がガラガラだったとしたら……。
もし観客席が静かなままで、盛り上がっていなかったら……。
あの感動的な試合は起きていないと思います。その意味で、この大会を成功に導くためのすべての努力が、あの熱戦を生んだといっていい。
たとえば、最終試合となった男子フルーレの決勝戦。
昨年7月の世界選手権で銀メダルを獲得した西藤俊哉(法大)と、前回の日本選手権を勝った松山恭助(早大)の対戦は、1-9と松山の圧倒的優勢の場面から、西藤が15-14と大逆転勝利を収めました。
序盤は変幻自在の剣さばきで松山が、積極的に攻めてくる西藤の勢いを完全に削ぐ展開でした。1-9となった時点で、観客の多くが「松山が勝つ」と思ったはずです。
でも、私はそうは思っていませんでした。逆転はありうる、と頭の隅で考えていました。
なぜなら、自分もこの舞台で逆転劇を演じたことがあるからです。
17歳の時に全日本を勝ちましたが、そのときは2-10からの大逆転勝利でした。ちょっとしたきっかけで勝負の流れは変わるのです。
そして「このまま負けるわけにはいかない」と開き直った俊哉が1-9からポイントを獲り、2-9となった瞬間、観客の声援が何段階も大きくなった。あれだけ点差がつくと、観客は劣勢側を応援するものです。その声援の大きさを俊哉が受け止めて、より集中力を高め、力に変えていった……。
私にはそのように見えました。
日本のエースになるならば……。
逆に恭助は、勝ち切ることができなかった。
勝負の怖さを痛感したはずです。
彼はフルーレ男子日本代表のキャプテンであり、エースです。背負うものも多い。だからこそ、今回の敗戦を教訓にしてほしいと思います。
彼が将来、オリンピックでメダルを獲得するためには、ああいう試合は絶対にやってはいけない。彼がもう一段上にいくためにも、うまく乗り越えてほしい。今回はこのような勝敗となりましたが、いずれにしてもこの2人はこれからも切磋琢磨しながら世界のトップを目指していく逸材です。
みなさんにはぜひ、彼ら2人はもちろん、今回の決勝に残った選手たちに注目してほしいなと思っています。