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妊娠9カ月までコートサイドに立つ。
監督・竹下佳江の求心力の源は何か。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO SPORT
posted2018/01/11 08:00
竹下率いるヴィクトリーナ姫路は、昨年12月の天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドに初出場。成果は着実に出始めている。
東北福祉大には勝ったものの、久光製薬には完敗。
母親と監督という立場の狭間で、竹下の中にはさまざまな葛藤がある。バレー界で、トップカテゴリーを目指すチームの監督としては初めてのケースだろう。
「それに、自分が働くということ以前に、やはりチームを強くしていかないといけない。そういう意味では、本当に一歩一歩です」と噛みしめるように言う。
一歩一歩前進して、ようやくたどり着いたのが、12月の皇后杯ファイナルラウンドだった。
1回戦で東北福祉大にセットカウント3-0で勝利した姫路は、2回戦で、今季のV・プレミアリーグで首位を独走する久光製薬スプリングスと対戦した。
結果はセットカウント0-3の完敗。しかし、まだ実戦の機会が少なく、あっても相手は大学生という状況の姫路にとっては、貴重な経験となった。
「現状把握をできたのは非常に大きかった。全部において差が見えました。この(プレミアリーグの)レベルでしっかり戦えなければいけないチームだと私は思っているので、その意味では現状は非常に厳しい」と指揮官は冷静に現実を受け止めた。
一方で、「予選からすごく苦しんでここまで来たことに関しては、非常に選手は頑張ったと思います」と選手たちをねぎらった。
異なるキャリアを持つ選手を、1つのチームに。
この1年は、ゼロからチームを作り上げる難しさを痛感してきた。
「ベースがあるわけじゃなく、何もないところにみんなが入ってくるチームなので、個々の集まりで、なかなかチームらしくなっていかない。特に(先発で)コートに立っている選手は、それぞれ企業チームでプレーし、一度は引退して復帰していたり、すごく個性がある。それはいいことなんですけど、やっぱりバレーボールって個が融合して1つのチームにならないと。
自分はこの企業でやっていた、こうやって頑張っていたというプライドが邪魔している部分もきっとある。でもここに来た以上はゼロからのスタートなわけなので、みんながちょっとずつお互いを認めていかないと」