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妊娠9カ月までコートサイドに立つ。
監督・竹下佳江の求心力の源は何か。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO SPORT
posted2018/01/11 08:00
竹下率いるヴィクトリーナ姫路は、昨年12月の天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドに初出場。成果は着実に出始めている。
夫と離れて長男とともに姫路へ移り、チームに参加。
姫路が、女性が働きやすい環境作り、選手やスタッフが結婚や出産を経ても続けられる体制作りを掲げていたことも後押しして、竹下は重責を引き受ける決意をした。
そして2016年6月に監督に就任。チームが本格始動した2017年には、夫と離れて長男とともに姫路に移り住み、子供を保育園に預けて練習に参加する毎日が始まった。
「毎日の生活や練習のサイクルがだいたい決まってくるので、その流れをつかめば、子供が元気な時は全然大丈夫なんですけど、問題は子供が病気をした場合ですよね。たぶん私だけじゃなく、お母さんみんながぶつかるところだと思うんですけど、そこも含めてチームが理解を示してくれて、チームの中に、そういう場合に預かってくれるスタッフを置いてくれたので、本当に周りに恵まれて、助けられました」
姫路にはアスリートマインダーと呼ばれる、保育士の資格を持ったチームスタッフがいて、保育園が休日の時や、子供が病気になって保育園に預けられない時などはそのスタッフが対応して支えた。
契約にも盛り込んだ、「第2子」の希望。
監督を引き受けるにあたって、竹下にはもう1つ、どうしても譲れないことがあった。第2子を授かりたいという望みだ。契約を結ぶ際に、竹下はその希望をチーム側にハッキリと伝えていた。
「指導者をするからといって、犠牲にしないといけないことはたくさんあるとは思うけれど、でもやっぱりそこは、私たち家族の中ではちゃんと考えておきたいことでした。だから、私はそういうことを望んでいるので、そこは絶対に(契約条件に)入れてくださいということは最初から言っていました。それを(契約に)入れておかないと、それこそ契約違反になりますから」
そして昨年、竹下は第2子を妊娠した。産休、育休中は中谷宏大コーチが監督代行を務める。
ただ、だからといってすべて解決、という単純な問題ではない。
「葛藤する部分は正直ありますけど、割り切らないといけないし、という感じですかね。上の子はある程度、2歳近くまでは自分の手元に置けたんですけど、下の子に関してはそうもいかない。本当はここまでは母乳で育てたいとか、理想はありますが、そこもできないんだなーと思うとすごく……残念というか、嫌だなと思う部分はあります。でもそこも自分で割り切らないといけないとは思います」