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妊娠9カ月までコートサイドに立つ。
監督・竹下佳江の求心力の源は何か。
posted2018/01/11 08:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
AFLO SPORT
昨年12月15日から開催された天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会ファイナルラウンドは、2016年に発足したプロチーム、ヴィクトリーナ姫路にとって初の全国の舞台だった。
姫路の竹下佳江監督は、コートサイドでじっと戦況を見つめていた。常に冷静なまなざしは、全日本の司令塔として活躍した現役時代と変わらない。ただ、まもなく妊娠9カ月になろうかというお腹のふくらみは、チームジャージを着ていてもはっきりわかった。
ベンチには監督席があるが、竹下監督は試合中ずっと立ち続けていた。
「みんな心配してくれるんですけど、普段の練習の時も常に立っていますから。なるべく選手に近いところにいて、選手のことが一番わかる監督でありたいという思いがあるので」
引き受けたからには、決して妥協はしない。
ただ、監督を引き受けることは竹下にとってとてつもなく大きな決断であり、そこに至るまでには様々な葛藤があった。
当初は断っていた監督の依頼だったが……。
当初は、監督の依頼をかたくなに断り続けていた。家族との生活を第一に考えていたからだ。
竹下は当時、プロ野球・広島カープの投手だった夫の江草仁貴氏と、2015年5月に誕生した長男と共に広島で暮らしていた。監督を引き受ければ姫路に住むことになり、家族が離ればなれになってしまう。また、思い描いていた通りの子育てもかなわなくなると考えた。
「やっぱり家族で一緒にいたかった。監督になると生活が完全に変わってしまう。子供も、3歳になるまでは保育園に入れないで自分の手元に置いておきたいと思っていましたが、働くとなると、そうはできないわけじゃないですか。世のお母さんたちも、たぶんそこの壁にぶつかるんだと思うんですけど」
しかし姫路からの熱心な誘いを断り続けることはできなかった。「私しかいないんだって言われると、どうにもできなくて」と苦笑する。