Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
男子バスケ代表は五輪に出られるか。
ラマスHC「選手を限界に追い込む」。
posted2018/01/08 11:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Tetsuo Kashiwada
アルゼンチンでクラブチームと代表、両方のヘッドコーチを経験した
新指揮官が、日本代表を五輪出場へと導く――。
Number936号(9月28日発売)の特集から全文掲載します!
熱血漢が日本のバスケット界にやって来た。
フリオ・ラマス、53歳。アルゼンチン出身で、2012年のロンドン・オリンピックではマヌ・ジノビリ(スパーズ)らのNBA選手を擁して自国を率い、4位入賞を果たしている。ヘッドコーチ(HC)としてのキャリアは長く、すでに30年近く陣頭指揮を執ってきた。
「ご覧の通り、あまり背は高くなかったので現役時代はガードでした。もちろん、サッカーもプレーしましたよ。ポジションはボランチです。私の役目は相手からボールを奪い、味方でいちばんテクニックのある選手にすぐさまパスを出すこと(笑)。バスケットにしてもサッカーにしても、闘志あふれる選手だったとは思いますが、選手として成功するよりも、10代の頃から指導者を志していました」
欧米ではなく、アルゼンチンと接点を作った経緯。
聞けば、所属するクラブで15、16歳の時分に、アンダー12のカテゴリーのコーチを務めていたという。
1988年にプロのHCとしてのキャリアをスタートさせると、アルゼンチンの「リーガ・ナシオナル」でこれまでにリーグ優勝5回、最優秀監督賞に7度も輝いた。母国の代表HCも務めたその彼が、東京オリンピック出場を目指す日本代表のHCに就任したのである。
これまで、日本のバスケット界は乱暴に分類するならば、アメリカとヨーロッパに学ぶ指導者が多かった。アメリカのバスケットは中継などで触れる機会も多く、個人スキルを重視する。一方、ヨーロッパ志向の指導者は、選手たちを育てる仕組みそのものに注目してきた。日本とラマスが育ったアルゼンチンの間には、相対的に交流は少なかった。
そのラマスと日本の接点を作ったのは、現・日本バスケットボール協会の技術委員会委員長の東野智弥である。東野はラマスの手腕に注目し、アルゼンチンに赴いてHC就任の説得にかかった。その時のことをラマスはこう振り返る。