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森コーチとの別れと秋山翔吾の助言。
西武の結束を、2018年も見たい。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/01/03 07:00
WBCからフル回転でプレーし続けた秋山。森コーチの悲報に揺れたチームを、逞しく支えた。
「89」のワッペンをつけ、13連勝を飾った。
それが、徐々に変化を見せる。
7月1日、2日の試合に敗れて5連敗を喫したが、直後の日本ハム戦には3連勝。平井克典、牧田和久、野田昇吾、武隈祥太、シュリッターや増田達至といったブルペン陣は連日、総動員でマウンドに向かった。連投も多く、ブルペン陣にとっては苦しい試合が続いたが、なんとかしのいだ。ブルペンには常に、森コーチの背番号である89のユニホームが飾られていた。森コーチの現役時代のように、シーズン中盤のブルペン陣はタフで、そのピッチングは鬼気迫るものがあった。
7月6日、球団は森コーチへの哀悼の意を込めて、シーズン終了まで全選手、コーチの帽子に「89」のワッペンをつけることを発表する。10日のロッテ戦よりシーズン終了まで着用することを決めた。その後、7月21日から8月4日まで、球団新記録となる13連勝を記録したのである。1958年以来、59年ぶりとなる13連勝で、7月19日の時点で11開いていた首位とのゲーム差を一気に5.5まで詰めることとなった。結果的にはこの連勝が大きく影響し、2位でクライマックスシリーズ進出を決めることとなった。
それぞれあえて言葉には出さなかったが……。
もちろん連勝の裏には、開幕から辻発彦監督が辛抱強く起用してきた若手選手が、その期待に応え、結果を出し始めたことも関係していただろう。しかし、どの選手も、あえて自分から言葉には出さなかったが、それぞれが心の中に、森コーチへの思いを強く抱き、グラウンドに向かっていたのではないかと今では思っている。
少なくとも筆者にとって森コーチの急逝は「明日が必ず訪れるとは限らない」という、当たり前だが、忘れがちな事実を思い出す出来事だったからだ。
野球がチームスポーツであることを、改めて示してくれた埼玉西武ライオンズの2017年シーズン。来季も結束することの大切さ、チームとして戦うライオンズを見たいと思う。