野次馬ライトスタンドBACK NUMBER

マリーンズの広報にカジワラあり。
謎の魚、“We Are”をあやつる鬼才。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHidenobu Murase

posted2017/12/29 07:00

マリーンズの広報にカジワラあり。謎の魚、“We Are”をあやつる鬼才。<Number Web> photograph by Hidenobu Murase

ロッテに謎の魚を登場させた人という肩書きだけでも、彼がどれほど異常な存在感を持つ広報マンかが伝わるだろうか。

謎の魚は、意味も無く変態しているわけじゃない。

 梶原のポリシーはファン目線であり、マスコミ目線。

 試行錯誤の中でスタイルはできあがってきている。Twitterやfacebookの公式アカウントをいち早く持ち、独自の情報を呟き続けた。とある球団がベンチ裏の動画をオフに映画にしたと聞けば、梶原は自らビデオカメラを持ち、YouTubeで毎日のように選手や裏方の動画を即日配信した。

「TwitterやYouTube、コラムなどは当日の試合と連動するようにしています。これはホームゲームだけ差別化してやっていることなんですが、野球観戦は、家を出てから試合を観て、帰るところまでをフルセットだと考えています。

 大事なものは共有する一体感。試合前の練習から、試合後の選手のコメントや動きまで、TwitterやYouTube、コラムで僕が出した情報は、お客さんが球場へ来る電車やバスの中で読めるんです。それは時間を短く感じさせる効果がある一方で、“ロッテは球場に観に来た方が面白いよ”っていうメッセージでもあるんですけどね」

 記事を作る時は不自然に作り込もうとはしない。

 過剰な演出は熱を起こすには邪魔になることもある。与えるのではなく呼び覚ます、その塩梅が実に難しいという。

 ひとつの記事や呟きがプレーの感動を増幅させる一方で、いい記事が書けたとしても、チーム状況が悪ければ「偉そうな事言う前に勝て」と叩かれるリスクも背負う。そう。意味もなく謎のサカナが第3形態に変態しているように見えても、その実大自然の理にのっとり、様々なタイミングを計算しているのだ。

 出すぎず、怯まず。すべてはマリーンズの勝利のために。

 選手とファン、人間同士の熱情を呼び起こし、梶原が心底惚れたこのチームの一体感を高める。「ハフ満足」「デスパいいね」など、ファンに親しんでもらうため、外国人選手のお立ち台でのキメ台詞を考えても、「カジさんのダジャレはスベる」と選手間で流布され、スタンドから「梶原の仕業だろ!」と野次られたこともある。

マリーンズの象徴“We Are”はこう始まった。

 だがそんな試行錯誤の中で、梶原が目指した“マリーンズの魅力”、その結実を見たのが“We Are”である。

 We Areとは、勝利後にライトスタンド前で選手が肩を組み、スタンドのファンと呼応する、勝利の一体感を共有するためにロッテ応援団が考案した新しい応援スタイルだった。

「スタンドのファンと、グラウンドにいる選手たちがひとつになって勝利の喜びを分かち合うあのスタイルは、This is ロッテの象徴です。

 あれも最初は選手を強制する側面が強くてなかなか上手くいかず、僕は辞めようと思っていたんです。でも、昨年のオフに鈴木大地と話し合った際に彼の方から『やりましょう』と言ってきた。

『でも一度はじめたら借金10や20あってもやめられないよ』と念を押しても『必ずやります』という。そういう風に選手が率先してやる意思を示してくれた時点で成功したと確信しましたね」

【次ページ】 内川も松田も中田も大谷も西川も“We Are”。

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