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マリーンズの広報にカジワラあり。
謎の魚、“We Are”をあやつる鬼才。

posted2017/12/29 07:00

 
マリーンズの広報にカジワラあり。謎の魚、“We Are”をあやつる鬼才。<Number Web> photograph by Hidenobu Murase

ロッテに謎の魚を登場させた人という肩書きだけでも、彼がどれほど異常な存在感を持つ広報マンかが伝わるだろうか。

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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Hidenobu Murase

 2017年も残り数日となったある日。雪の降りしきる秋田駅に、2人の男が降り立った。

 ひとりは地元、秋田商業出身、千葉ロッテマリーンズの2年目の成田翔投手。雑誌の取材で帰省してきた19歳の若武者である。その傍らには、少年の面影を残す成田投手のあどけない笑顔を、ひと時も逃すまいと目を光らせる男がひとり。

 男ははにかむ成田投手のベストショットを逃さずスマホで撮影し、コマメにTwitterに上げた。慣れない取材に緊張する成田投手にアドバイスを送りつつ、懐に忍ばせたビデオカメラは隙あらばとベストショットを覗っている。

 取材のアテンドをつつがなく終え、宿に戻ると鞄の中からノートパソコンを取り出し、実に4本を抱える連載原稿の今年最後の執筆に取り掛かる。

 彼の名は梶原紀章。通称カジさん。千葉ロッテマリーンズ広報メディア室所属。

 球界関係者が彼を評すとき、こんな言葉が囁かれるのを聞いたことがある。

「幕張に過ぎたるものが二つあり。熱烈なファンと、広報カジワラ――」

朝から晩までマリーンズ情報を伝えてくれる男。

 マリーンズを愛し、マリーンズに生き、マリーンズを世に広く報せるためにはどんな手段も厭わない超絶怒涛の敏腕広報。

 幕張→台湾→ニューヨーク。マリーンズ戦士のいるところ、常に彼の姿があり。コラム執筆は20分で仕上げる鉄の筆を持ちながら、時にファン感でブルゾンに扮して「35億」とやり、時に雨のグラウンドで諸積ばりのヘッドスライディングをかます。

 その仕事ぶりは悪魔か天使かお守りか。マリーンズ広報としての通常業務をこなしながら、千葉ロッテマリーンズ公式Twitterやfacebook。YouTube「マリーンズチャンネル」の【広報カメラ】を担当し、千葉日報「千葉魂」、ベースボールチャンネル、文春オンラインなど、新聞雑誌Web等に連載コラムを持ち、おはようからお休みまでマリーンズ情報をお届けしてくれる。

 そんな梶原が2005年にマリーンズの広報になって12度目のシーズン、干支ひとまわり(2011年はチケット部)を終えた年の瀬に、深くため息をついていた。

「1年間、がむしゃらに働いてきましたが、今年はさすがにちょっと疲れましたね……」

【次ページ】 負けている時に明るい空気を作るのが広報の仕事。

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