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それでも、やっぱりフルマラソン。
僕らが湘南国際マラソンに出る理由。 

text by

柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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photograph bySHONAN INTERNATIONAL MARATHON

posted2017/12/14 11:00

それでも、やっぱりフルマラソン。僕らが湘南国際マラソンに出る理由。<Number Web> photograph by SHONAN INTERNATIONAL MARATHON

相模湾を望む湘南の海岸沿いを走るマラソン選手たち。運営がしっかりしていて、さらにこれだけ風光明媚なコースは日本にもそう多くはない。

40代半ばの男が迎えたランナー版“中年の危機”。

 というわけで、ネットタイムでいうと、2013年の3時間12分45秒が湘南国際でのパーソナルベスト。以降、毎年少しずつタイムが落ち、去年は3時間24分35秒だった。40代半ばになり、以前のようにがむしゃらな走りはできなくなった。客観的に見て、ベストの更新が難しいということも分かっている。

 もちろん、マラソンはタイムがすべてじゃない。そもそも競技者でもないんだから、自分の中で充実感が得られれば、それでいいじゃないか……とは思うのだが、やっぱりレースに出る以上、ずるずるとタイムが落ちていくのは、何とも切ない。

 ランナー版の“中年の危機”とでもいおうか。タイム以外のどこにモチベーションを置き、何に喜びを見出せばいいのか? たぶん多くの中年市民ランナーが同じような悩みを抱えているのではないだろうか。

 そこで、ある人はウルトラマラソンにシフトする。また、ある人はトライアスロンに活路を見出す。最近はトレイルランニングに向かう人も多い。僕もご多分にもれず、その3つすべてに手を出した。もともと山登りが趣味だったこともあって、この数年はとくにトレイルにかける比重が大きくなった。

フルマラソンに対する、相反するふたつの感情とは?

 長時間、山の中を駆け回ること。そこに純粋な喜びを見出している自分がいるのは間違いない。間違いないのだが、ぎりぎりまで自分を追い込んでタイムを出す、フルマラソン特有の苦しさから逃げていたのも事実だ。

「だって、素人なんだし、もともと足が速いわけでもない。タイムを5分、10分縮めたところで、何の意味があるっていうんだ?」

 そう呟く自分がいる一方で、

「市民ランナーだって、大会に出る以上は競技者なんだ。タイムを狙うことは、レースというものへの最低限のリスペクトだ」

 そう考える自分もいる。

 そんなモヤモヤを吹っ切りたかったのかもしれない。春から秋にかけては、思う存分ウルトラとトレイルを走った。そして、11月からはがらりとモードを切り替えて、ロードの練習に励んできた。そして、冬のフルマラソンシーズンの初戦として迎えたのが、今回の湘南国際だった。

【次ページ】 「ひと月後には箱根駅伝の選手たちもここを走るんだ」

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河野太郎

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