第94回箱根駅伝(2018)BACK NUMBER
今季学生最強ランナー、
順大・塩尻和也が目指す道。
posted2017/12/07 11:00
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph by
AFLO
箱根駅伝で、エース区間として注目される“花の2区”。
今回の区間賞争いは前回区間賞の神奈川大・鈴木健吾、山梨学大の留学生ドミニク・ニャイロらの争いとみられていたが、ここに来て急浮上してきたのが順大の塩尻和也だ。
塩尻がこれまで主戦場にしていたのは、昨年リオデジャネイロ五輪にも出場した3000m障害。だが今年は5000mと1万mの記録向上を目指し、5000mは4月に13分33秒14まで自己ベストを伸ばしていた。
そして1万mでも、11月25日の八王子ロングディスタンスでケニア人選手に食らいつき、27分47秒87の好記録をマーク。これは日本学生歴代4位の好タイムで、今季の学生陸上界最速の記録でもある。本人も、レースの数日前には自信を口にしていた。
「(27分台は)出せる感覚はありますね。最初から速いペースで行くのに面食らうことはあるかもしれないけど、それで守りに入ることはないと思います」
その言葉通り、塩尻の持ち味は前半からハイペースで突っ込める積極性だ。前回の箱根駅伝でも1区15位と出遅れたチームを2区での思い切った走りで7位まで押しあげた。
「行けるとこまで行くというのが彼のスタイル」
順大を率いる長門俊介駅伝監督も苦笑する。
「高校の時の先生も言っていたけど、スタートラインに立った時は不安らしいです。ただ、『バンッ』と号砲が鳴ったらスイッチが入って自分のリズムで走り出す。行けるとこまで行くというのが彼のスタイルなので、前に人がいると抑えられないんです。
最近は留学生が最初にハイペースで入って後半で失速するのに対して、日本人が上手くまとめて走るというパターンが多いじゃないですか。でも、前回の箱根駅伝は逆でしたからね。前半から突っ込んで入った塩尻に対して、1秒前で中継した拓大の留学生の(ワークナー・)デレセは堅実な走りを見せて、最終的には逆転。だから『デレセの方が賢いぞ』とからかっていたんです(笑)」