プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランド代表への期待度低っ!
9割が「優勝はない」と結果を悲観。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/12/05 08:00
マラドーナの「神の手」は、今回はイングランドに有利に働いた……ように見えるが果たして。
優勝の噂が始まりそうな組合せだが……。
そのグループGを勝ち抜くことができた場合には、グループH通過組との16強対決が待っている。ポーランド、コロンビア、セネガル、そして日本からなるグループHは、どこが抜けてもおかしくない興味深いグループだが、逆に言えば、恐れを感じるような相手がいないグループでもある。
8強以降は何が起こっても不思議ではない世界だと言われることを考えれば、1966年以来となる優勝の可能性が、囁き以上のボリュームで論じられてもおかしくはないのが従来のイングランドだ。EURO2016の前に、筆者が母国人視点のイングランド代表プレビューを依頼した『ミラー』紙のベテラン記者は、「優勝が現実的な夏」と綴っていた。
だがロシア大会を前にしたイングランドのムードは、悲観的なまでに現実的だ。大衆紙『サン』が抽選後に行った意見調査によれば、参加者の9割が、イングランドの優勝は「ない」と答えている。
ブラジルでの前回大会では開幕2戦で敗退が決まり、続くEUROではアイスランドに引導を渡されたイングランドの国民は、痛いほどに母国代表の現実を受け入れている。国内のムードは、かつては早期敗退が決まるまで勝手に「優勝だ!」と盛り上っていたのとはまるで別国のよう。寂しさを感じるほど冷めている。
「神の手」で苦しめられたマラドーナが今度は。
だからこそ、組分け翌日の国内紙のスポーツ1面は、ディエゴ・マラドーナのオンパレードだった。
相変わらず両手首に腕時計をはめ、昔から厚い胸を張りだすようにして「ENGLAND」と書かれた小さな紙片を世に示すマラドーナの写真。
モスクワの抽選会場で司会進行を務めたガリー・リネカーが、「いつでも手捌きがいい」とブラックなジョークを呟いたように、現役時代にW杯のイングランド戦で手を使ってゴールを奪った元アルゼンチン代表の「神の手」が、今度はイングランドに優しいくじを次々と引いてくれた。
マラドーナは、イングランドがアルゼンチンと同居する危険があったグループDに、同じ抽選ポット2からクロアチアを引いてくれた。ドイツのいるグループFにはメキシコを入れてくれた。そして、イングランドを「希望の組」に入れた後にも、最後の同居チームにパナマを引いた。
『スカイスポーツ』のスタジオで、「もう1チームはパナマがいい」と言っていた往年の守護神ピーター・シルトンの願いまで叶えてくれたのだ。