JリーグPRESSBACK NUMBER
10年ぶりのJ1復帰は実現せずとも。
ヴェルディとロティーナの上昇曲線。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byTetsuro Kaieda
posted2017/11/30 07:00
名門復活を託された竹本GM。ロティーナ体制の決断をした1人でもあり、信頼関係は堅い。久々のJ1復帰へ、視界は開けてきた。
これまで何度も形勢を覆してきた修正力も効かず……。
「福岡の先制点によって、試合の方向が決定づけられました。スタートは決して悪くなかったのですが、相手がゴールを決めたことで引き分けでもよい状況がより有利に働き、自信を持ってプレーしていたように思います。福岡はリトリートした状態でとてもよい守備をするチームで、チャンスを容易に与えてくれない。ゲームを支配し、向こうの陣内でプレーすることはできましたが、多くのチャンスはつくり出せませんでした」
ロティーナ監督は試合中の修正力に長け、これまで巧みな采配で何度も形勢を覆してきた。スペイン仕込みの磁場に引き込まれるように勝点を置いて去ったチームはいくつもあったが、今回ばかりは打つ手が功を奏さなかった。
こうして、初のプレーオフ出場までこぎ着けた東京Vの2017シーズンは終焉を迎え、10年ぶりのJ1復帰は儚く消えた。
完敗に違いないが、ここで得られた経験は消化吸収され、好影響を及ぼす可能性を秘める。チームに、プレーオフの経験者は梶川諒太と橋本英郎のみ。多くの東京Vの選手たちが土壇場での1点の重さ、怖さを思い知った。勝者と敗者を分かつ、新たな基準を手に入れたはずだ。
はた目には5位のチームが負けただけに見えたとしても。
はた目には所詮リーグ5位のチームがコロっと負けた、取るに足らない出来事と映るだろう。事実、その通り。しかしちっぽけだけれども、チームにとって大切な一歩だ。
ロティーナ体制を主導した竹本一彦ゼネラルマネージャーは、今季をこう総括する。
「非常に内容の濃いシーズンでしたね。ロティーナ監督の指導により徐々にチームが完成され、その中で若手が伸びていった。ただ今日の若手の出来であれば、ベテランにはまだ及びません。たとえば、経験のある橋本のほうが中盤で効果的な仕事ができたはずです。こういった舞台で、もっと自分の特長を発揮できるように成長を求めたい」
サイドアタッカーとして開花した安西幸輝、攻守に貢献度の高い渡辺皓太、センターバックとして一本立ちしつつある畠中槙之輔など、めきめき頭角を現してきた若い選手は多い。長期的なスパンでチームづくりを進めているだろうロティーナ監督は彼らを粘り強く起用し、その方針は最後までブレなかった。