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鹿島名物「食肉のモツ煮」物語。
連覇の瞬間は極上の1杯とともに。
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/11/25 09:00
フラッと訪れるには少々決意のいるカシマスタジアム。だからこそ「食肉のモツ煮」を食した瞬間の幸福は何ものにも代えがたいのだ。
「年間通じて涼しいから1年中売れるのかも」
今やモツ煮は、カシマスタジアムに来て何を食べるか考えたとき、誰もがまず頭に浮かべるメニューの1つとなった。だが「スタジアムで出店当時から出していたメニューではあったんですが、人気が出たのは最近なんですよ」と笹本さん。
「みんなインターネットとかで見て来てくれるのかね」
そっと微笑む。大人気の秘密はいかに。味付けのこだわりを聞くと、意外や意外「昔ながらのものを出しているだけ。そんなにこだわってという訳ではない」という。
あえて言えば、という前置きのあと、1つ教えてくれた。
「新鮮なモツを選んで煮ることくらいですかね。それと鹿嶋は年間を通じて涼しいんです。それはスタジアムも同じ。だから1年中みんな買ってくれるのかもしれないですね」
毎試合、長野から片道8時間かけてくる人も。
いつも自身が店頭に立ってモツ煮を手際よく盛りつける。そんな笹本さんにとっての楽しみは、“モツ煮が売れる”ということよりも、サポーターとのコミュニケーションをとることだという。
「お客さんの顔を見ているだけで楽しいんですよ。結構、遠くから来る人もいてね。毎試合、長野県から片道8時間かけて1人で来る人もいる。お客さんの中にはアウェイも見に行って、全国を回っている人もいるから、お土産を買って来てくれる人もいるんです」
今季アントラーズサポーターの観客席は、ホームとアウェイが入れ替えとなった。これまでホーム側のゴール裏に近かった鹿島食肉事業協同組合にとって、アントラーズサポーターから少し遠い位置になった。
「今年からうちの店はアウェイ寄りになったんですが、売れ行きがこれまでとそんなに変わらないんです。遠くなってもそれだけ買いに来てくれる人がいるってことなのかな。そういうのはうれしいですよね」
言葉が弾む。
「買いに来てくれる人たちは、僕がモツ煮をよそって一言二言話すだけでも楽しいみたいで。うちのモツ煮を食べて、試合で勝った。だからゲンを担いで、続けて食べる。そういう方も多いんです。まあ、声をかけると言っても今日は寒いなあとか言うくらいなんですけどね」