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涙の選手、怒る国民、居直る指揮官。
W杯を失ったイタリア「世界の破滅」。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2017/11/14 18:15

涙の選手、怒る国民、居直る指揮官。W杯を失ったイタリア「世界の破滅」。<Number Web> photograph by Getty Images

イタリアのゴールをともに守り続けたブッフォンとボヌッチがピッチでかわした最後の抱擁は、あまりにも物悲しかった。

「W杯を逃した男たち」という汚名が一生続く。

 FWベロッティをはじめ、若手の選手たちは号泣していた。彼らはカルチョの国で「W杯を逃した男たち」という汚名を一生背負って生きていかなくてはならない。

 試合後のサン・シーロの会見場や各メディアのスタジオは、完全にお通夜ムードだった。

 怒りに震えるOBや識者たちが待ち受ける中、試合終了からたっぷり2時間かけて会見場に現れた最大の戦犯ベントゥーラは、開口一番「辞任はしない」と発言し、その場にいた全員を唖然とさせた。だが、国民の反応を怖れる連盟は、一両日中にも必ずベントゥーラを解任するだろう。

 会見場が騒然とする頃、歓喜爆発のスウェーデンの選手たちは、母国へ吉報を伝えていたグラウンド脇のTV局の中継セットめがけて全員で突進していた。アナウンサーや解説者たちへ跳びかかりながら、セットを破壊する彼らの顔はこれ以上ないくらい、スカンジナビアに訪れる冬を暖かくするだろう。

イタリア人にとっては、涼しくて寂しい夏になる。

 20年前、フランスW杯予選プレーオフで代表デビューした不世出のGKブッフォンは、アズーリ最後の試合にメッセージを残した。

「イタリア代表ってところは特別な場所だ。今夜、サン・シーロへ集まってくれた人たちはみな、最後の95分目まで大きな声援をくれた。ミラニスタやインテリスタ、ユベンティーノもナポリターノも、ロマニスタもラツィアーレも関係ない。皆ひとつになれた。これは代表だけにしかない魔法なんだ。俺たちイタリア人は強情で頑固だ。諦めが悪い。一度どん底まで落ちても、必ずそこから這い上がってみせる」

 来年の夏、スウェーデンは12年ぶりの祝祭にさぞ盛り上がるだろう。

 W杯? 何のこと?

 とぼけるイタリア人にとっては、いつもより少しばかり涼しくて、寂しい夏になる気がする。

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