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濱口遥大の球を誰よりも受けたから。
好投導いたDeNA高城俊人の観察眼。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/10 17:30
第4戦では貴重な追加点となる本塁打も放った。24歳、捕手として高城は今から伸び盛りの時を迎える。
「正直、広島の時のほうが緊張してましたね」
ゲームセットまで要の座を譲らなかったシリーズ第4戦終了後、高城は言った。
「正直、広島の時(CS)のほうが緊張してましたね。今日は緊張というより『やってやろう』という気持ちのほうがすごく強かった。(第3戦まで)見ていて悔しかったですし、なんとしても絶対に勝ちたいと思っていました」
気持ちの高揚とは裏腹に、頭は常に冷静だった。
チェンジアップやフォークなど落ちるボールを多投する濱口をリードするうえで、ワンバウンドの投球を逸らすリスクは避けられない。初回にさっそくワイルドピッチが出て走者を二塁に背負ったが、4番の内川聖一をサードフライに打ち取って失点を防いだ。
5回にも先頭の松田宣浩から空振り三振を奪いながら、前に落としたボールを拾いにいく際に松田の足に手がぶつかる不運もあって、振り逃げで出塁を許してしまう。それでも次打者を併殺に打ち取り、傷口を広げることがなかった。
「グローブの中で手をぐちゃぐちゃしろよ」
「どうしても先制点をあげたくなかった。自分が逸らしてランナーが得点圏に行ったとしても、焦ってサインを出すんじゃなくて、一呼吸置いてから出すようにしたり。そのあたりにはすごく神経を使いました」
打者に対する観察眼も冴えた。高城のコメントには、戦場に立った者だけが語れる生々しさがあった。
「デスパイネと内川さん、チェンジアップの振り方がすごく気持ち悪くて。(途中からチェンジアップを)捨てたんだとわかりました。だから(濱口に)『グローブの中で手をぐちゃぐちゃしろよ』と伝えたんです」
投手の手がごそごそと動けば、打者は「どの球種の握りをしているのか」と多少なりとも惑わされる。それがどれだけ効果的なのかはわからないが、できることはすべてやった。細心の注意を払って強力打線に対峙していたことを物語るエピソードだ。