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ロナウジーニョを干した男・クルピ。
就任濃厚ガンバで遠藤をどう扱うか。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byAFLO
posted2017/11/03 07:00
かつてセレッソで柿谷、香川、山口、清武、乾らを一本立ちさせたクルピ氏。同じ大阪の地でその手腕を発揮するのか。
タレント不足のサントスでは手堅いサッカーだった。
2014年に刊行した自著『伸ばす力』の中でクルピ氏はこう記している。
〈私は、基本的には選手の特徴を見て戦い方を決めるタイプの監督だ〉
その言葉に嘘はない。
10月28日、ブラジル全国選手権で3位という好成績だったにも関わらず、クルピ氏は解任の憂き目を見た。6月の就任以来、当時10位だったチームを立て直し、一時は2位浮上。在籍時には公式戦31試合で14勝12分け5敗という好成績だったにもかかわらず、サントスが解任に踏み切ったのは、そのスタイルも一因だった。
解任時はリーグで2番目に少ない失点を誇り、堅守速攻で結果を出して来たクルピ氏のサッカーが、攻撃的なサッカーを望むサンチスタ(サントスサポーター)には不評だったのだ。サッカー王国では「攻撃的なチームを作り上げる」と評される名将、クルピ氏だが今季のサントスはタレント不足。手堅いサッカーでチームを立て直したのは、クルピ氏のリアリズムゆえだった。
「チームの駒を新しい監督に与え、我々が目指すものをもう一度明確にしてスタートさせたい」と梶居強化部長は来季に向けての指針を口にしたが、クラブは財政面でも、決して楽な状態に置かれていない。
とはいえ今季も三浦弦太やファビオ、泉澤仁ら新戦力で的確なテコ入れを行なって来た。いかなる指揮官を招こうとも確固たるフィニッシャーの獲得なしに、来季の復権はおぼつかないはずだ。
今の遠藤は絶対的な存在ではなくなっている。
「ダ・ゾーンマネー」と呼ばれる理念強化配分金を逃すのが濃厚で、財政的にも決して余裕があるとは言えないガンバ大阪。クルピ氏を待つもう1つの難題は、遠藤保仁というパズルのピースの扱いである。
三冠に貢献し、JリーグMVPを獲得した2014年には「サッカーは年齢じゃないことをこれからも証明し続けたい」と言い切った遠藤だが、もはやチーム内では絶対的な存在ではなくなっていることも事実である。
ボランチとして求められる最低限の守備力に疑問符がつき、かつての遠藤であればあり得なかったイージーミスも頻発した。遠藤の実績をリスペクトするがゆえに遠藤の起用法に試行錯誤し続けた2シーズン、ついに理想の布陣を見いだせなかったガンバ大阪が無冠に終わったのは、言わば必然でもあった。