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“鈴鹿に14万人しか来ない”なのか?
日本GPの意義、問題の根本を考える。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2017/10/21 11:30
数は減っても、鈴鹿のファンの熱量は高く、ドライバーのファンサービスも丁寧だ。問題はそれ以外のところにある。
実は日本GPのチケット価格は世界的にも安い方。
これは日本以外の状況についても同様だ。例えば、F1発祥の地イギリスでもF1人気の低迷が嘆かれているが、実際に数字を見ると、必ずしも悲観することはない。
イギリスのスポーツイベントで最も多くの観客を集めているのがテニスのウインブルドンで、毎年約50万人が詰めかけている。ただし、ウィンブルドンは14日間の合計だ。F1のイギリスGPは、木曜日も含めた4日間で約34万人を集めており、いまなお根強い人気を誇っていると言えるだろう。
それでも、日本GPの観客数が減少していることは事実だ。その理由のひとつに、チケットが高価なことがよく指摘される。しかし、鈴鹿サーキットの関係者によれば、「じつは毎年、最も高い席から売れている」という。しかも、日本GPのチケット値段は世界的に見ても、決して高くはない。今年の全20戦の、グランドスタンド(3日間)で最も安いチケットを比較すると、鈴鹿は5番目に安い。
問題は観客数ではない。見つめ直さなければならないのは、1日6万8000人を集めても、単独イベントとして収益が大きく上がらないというシステムにあるのではないか。
サーキット内広告や放映権料の権利もF1側が握る。
なぜ、F1は1日6万8000人を集めても、成功と言えないのか。それはF1を開催するにあたって、主催者(鈴鹿サーキット)がF1側と結ばなければならない契約の内容が独特だからだ。
開催権料を支払うのはもちろんだが、F1側はそれ以外にサーキット内の広告やテレビ放映権料も、すべて権利を握る仕組みとなっている。つまり、主催者側の収益はチケット代とサーキット内のお土産、食事などの売り上げだけだ。
当然、それだけで賄い切れるはずもなく、ほかのグランプリの多くは国・自治体からの財政支援でなんとか補っているが、鈴鹿にはそれもほとんどなく、自力で採算していかなければならない。それでも日本GPが続いているのは、ひとえに鈴鹿サーキットを含めたモビリティランドに、「鈴鹿でF1を開催しよう」という情熱があるからにほかならない。