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“鈴鹿に14万人しか来ない”なのか?
日本GPの意義、問題の根本を考える。
posted2017/10/21 11:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
鈴鹿サーキットで開催された今年の日本GPの観客数が、10月8日の決勝レース日(6万8000人)、3日間合計(13万7000人)でも過去最少を更新した。観客数のピークは2006年。決勝日に16万1000人、3日間で36万1000人を記録した。今年の3日間合計の観客数は、'06年の決勝日1日分にも及ばないほど減少してしまったのだ。
なぜ、観客はF1から遠のいたのか?
その要因を、鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの広報は次のように分析し、自戒する。
「熾烈なチャンピオン争いやハイスピードバトルが繰り広げられている今シーズンの魅力や、鈴鹿でのレース展開の期待感、また世界で最もドライバーに近いグランプリとして様々なイベントを展開している鈴鹿ならではの魅力。過去最少動員となったことには、これらの魅力を十分に伝え切れなかったのではないかという反省がある」(水上嘉之/鈴鹿サーキット 広報・宣伝課 課長)
佐藤琢磨をゲストに迎えるなど努力はしている。
今年、F1はマシンに関するレギュレーションが変わり、スピードアップした。鈴鹿の予選ではルイス・ハミルトン(メルセデス)が'06年にミハエル・シューマッハーが記録したコースレコードを11年ぶりに更新した。昨年まではメルセデス一強だったタイトル争いでも、今年はメルセデスとフェラーリが互角の戦いを演じてきた。
さらに今年のインディ500覇者の佐藤琢磨をゲストに迎え、レジェンドカーによるデモランなど、ファンとドライバーの距離感を縮める努力も行った。フェラーリのドライバーが予選後にグランドスタンドでトークショーを行うのは、日本GPぐらいである。
つまり、運営サイドとしては、今年の日本GPを魅力あるイベントにするために、可能な限りファンサービスをしていた。にもかかわらず、観客数が上向かなかったことに落胆していた。
だが、責任は鈴鹿サーキット側だけにあるとは思えない。'06年までの状況と、現在のF1を巡る環境もまた違っているからだ。それは日本人ドライバーの存在と地上波でのテレビ中継だ。