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「岸ロス」乗り越えた西武先発陣。
野上亮磨と十亀剣はCSでも頼れる。 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byKyodo News

posted2017/10/10 07:00

「岸ロス」乗り越えた西武先発陣。野上亮磨と十亀剣はCSでも頼れる。<Number Web> photograph by Kyodo News

10月1日の日本ハム戦では危なげない投球で8回4安打無失点。野上は'13年の自己最多に並ぶ11勝目を挙げた。

チェンジアップがダメならフォーク、という余裕。

 野上は語る。

「うまく力が抜けていると思います。今シーズンはチェンジアップだけではなく、フォークもいいので、試合が始まって、もしチェンジアップが今一つだなと思ったら、フォークでもストライクが取れる。逆に、フォークがだめならチェンジアップがあると、余裕を持ってピッチングを考えられるようになりました。カウントを悪くしても、どちらかの変化球でストライクが取れるので『もし打たれたら』とか『もし甘く入ってしまったら……』という後ろ向きな気持ちがなくなりました」

 一時は中継ぎも経験した野上が、こうして先発ローテーションの大黒柱として復活した。野上の2桁勝利とチームのクライマックスシリーズ進出が、ともに4年ぶりであることを見ても、今シーズンのライオンズの躍進は野上の力によるところが大きい。

十亀は「力を抜いてひょいひょいと」投げたら……。

 一方、2年ぶりとなる2桁勝利こそ逃したものの、シーズンを通じて安定した投球を見せた十亀は今シーズンの自身をこう語る。

「腰痛で抹消された直前の試合以外は、ずっと6イニングス、7イニングスを2失点、3失点に抑えられていたので、コンディションさえ良ければ自分のピッチングできるんだという手応えはありましたね。自分の中ではプロ入り後、6シーズンの中でいちばん落ち着いている感覚があります」

 6月度にはプロ入り初の月間MVPも獲得した。

「いちばん変わったのは、力の入れ具合です。昨シーズン、結果が出ないときや、調子が悪いと感じたときは『悪いからもっと腕を振らなきゃいけない』と力んで、コントロールがバラついてフォアボールを出す。今度は『ストライクを取らなきゃいけない』と思って、コントロールが甘くなる。そこを打たれることが多かったですから」

 力の入れ具合に着目したきっかけは開幕直後、二軍戦で先発したときだった。小雨の降る中、マウンドに上がった十亀は「とにかく早く終わらせないと」と、テンポをより強く意識して打者に対した。

「マウンドがぐちゃぐちゃになると投げにくくなるので、まずはストライクを入れるために、力を抜いてひょいひょいと投げていたんです。結果的に相手バッターが打てなくて、力を入れていない割にはスピードも145~146kmは出ていた。『あれ?こういうピッチングでいいのか』と思ったんですよね」

 その後、一軍に合流。「最初は登板日によって、その力感がつかめなくて苦労していたんですけど、交流戦あたりから、ちょうどいい力の入れ具合がわかってきました」と振り返る。

【次ページ】 若手の出遅れをカバーした経験値とプライド。

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