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上原彩子33歳。米5年目で得た自信。
「自分の限界は自分でしか作れない」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byShizuka Minami
posted2017/10/04 11:40
エビアン選手権最終日、最終18番の第2打。大会終了後、「(やるからには)東京五輪にも出たいと思います」と目標を口にした。
米国生活にもしっかりと適応した上原。
2013年から米ツアーでプレーしているが、「1年目は何も分からなくて毎日がハプニングでした」と当時を振り返る。
アリゾナから車でカリフォルニアに移動する際に砂漠の真ん中でガス欠になりかけたり、離陸直前の機内で体調不良になって飛行機から降ろされたり、と命に関わるようなこともいくつか経験した。
だが上原が笑顔でおっとりとした口調でハプニングを話すと、アメリカ珍道中のような趣になり、米ツアーでともに転戦する日本人選手や関係者は心の中では(え、これは笑っていいところなの)と思いながらも、つられて笑ってしまうケースも多かった。
「今は要領がよくなって、昔のようなことはなくなりました。当時は『ハプニングも含めて米ツアー』と考えて楽しんでいましたから」と話す。
ポジティブに考える性格も米ツアーにうまく適応したのだろう。
スポーツにとどまらず、最大限のパフォーマンスをするためには、どんな環境でも「自分らしさ」を持ち続ける必要がある。様々なハプニングに遭遇しても焦らず、怒らず、のんびりと対処し、逞しさを増したこともここまで5年間戦い続けられる鍵になっている。
自分のやり方を突き詰めるだけでなく、柔軟性も必要。
また上原は頑なに日本でのやり方を貫くのではなく、米国流に合わせる「柔軟性」も米国で学んだと話す。
上原は「練習の虫」としてつとに有名で、トーナメントの前にはずっと練習しているイメージがあった。しかし、それをやんわりと否定する。
「2013年の最初の何試合かはがむしゃらに練習していました。でも、米ツアーは4日間大会が多いので、疲労をとることも大切だと考えるようになりました。また2年目からある程度戦えるようになってきたので、今はその日にするべきこと、やりたい課題を練習前に持って、効率良く行なうようにしています」と説明する。
広大な米国の移動や4日間戦い続けるためには体力、気力、そして適応力が必要になる――1年目から少しずつ経験値を上げた結果が、このエビアンでの好結果につながったのだろう。